借金の返済日が迫っているけど今月も返済するお金が足りないといった状況では、自己破産の4文字が浮かんでくるのではないでしょうか。とはいえ、自己破産がどのようなものか、経験がないとわからないことが多いのも事実です。
この記事では、自己破産にかかる費用の相場や内訳、手続きの流れや無料相談でできることなどを解説します。
✓自己破産申立ての要件
✓無料相談でできること
✓自己破産をする際の相談先
自己破産とは
自己破産とは借金(債務)が増えすぎて返済困難となった人が、生活を立て直すために行う債務整理の一種です。
裁判所に破産状態であることを認定してもらったうえで、債務の返済義務を免除してもらう「免責」が大きな目的となっています。自己破産の申立て先は、借金をしている人(債務者)が居住している住所地を管轄する、地方裁判所または支部です。
自己破産は主として、ほかの債務整理手続きでは生活の立て直しが不可能と考えられる程度に支払いが不能な状態で選択します。ほかの債務整理手続きでは、返済が前提となっているためです。破産法の考え方にしたがえば、返済日に返済できるだけの支払い能力がない状態が続いていれば、支払いが不能な状態と言えます。
自己破産は「破産手続き」と「免責手続き」の2段階があります。債務者は複数の債権者から借り入れをしている多重債務状態に陥っているケースが多く、破産手続き開始決定までは問題なく進むケースがほとんどだといえるでしょう。
破産者となった債務者に財産と呼べるものがあれば、管財事件として財産は換金されて債権者に分配されます。財産がなければ破産手続き開始決定と同時に、破産手続きが終了する同時廃止事件として扱われます。
重要な点として、破産手続きの後に続く免責手続きで免責決定が出るかどうかがあります。免責が確定すれば、債務の返済義務はなくなります。しかし、免責が認められなければ破産はしたものの返済義務はなくなりません。
自己破産にかかる費用の相場
自己破産にかかる費用には、大きく分けて裁判所に支払う費用と弁護士費用の2種類があります。両方合わせた費用の目安は、財産がない場合で30万円~50万円程度、財産がある場合は50万円~100万円程度です。
自己破産にかかる費用の内訳
自己破産にかかる費用の内訳としては、主に以下の項目が挙げられます。
- 弁護士や司法書士(※)の報酬
(事務所による違いが大きい) - 裁判所の手数料と通信用郵便切手
(概ね1万円程度 債権者数等によります) - 裁判所の予納金
(財産がなければ12,000円程度、財産があれば20万円~250万円程度 事案によって変更されます。)
※司法書士の場合、書類作成やアドバイスは依頼できますが、代理人になってもらうことはできません。
自己破産にかかる費用の見積もり方法
自己破産にかかる費用の見積もりは、前述した内訳をベースに考えられます。
裁判所の手数料や郵便切手は、管轄裁判所が定める金額をそのまま当てはめるだけです。弁護士や司法書士の報酬は、事務所ごとに決まった金額を計上します。
予納金は後述する管財事件か同時廃止事件かによって変わりますが、金額は裁判所が定めています。
自己破産の申立て要件
自己破産は誰でもできるわけではありません。申立て要件について解説します。
まず、借金の返済ができない支払い不能状態であることが求められます。返済を負担に感じていたとしても、支払いが可能であれば破産状態とは認められません。
支払いが不能の破産状態であったとしても、債務の種類が非免責債権だけの場合は、免責されない可能性が高いことから自己破産の申立てをする意味がありません。
免責不許可事由がある場合も同様です。ただし、免責不許可事由があったとしても免責されるケースもあります。
無料相談でできること
法律事務所などでは、自己破産を考えている債務者に向け、無料相談を実施しているケースがあります。
行政でも弁護士による無料法律相談を実施しています。無料であることから時間は限られますが、以下に示す相談が可能です。
破産が可能かどうか
自己破産の可能性について相談できます。自身が置かれているおおよその状況から、破産手続き開始が決定され、免責許可の決定がなされそうか否かのアドバイスを受けられます。
自己破産以外の手段が取れるか
必ずしも自己破産にこだわらない場合には、個人再生や特定調停、任意整理といった自己破産以外の手段が可能かどうかの相談ができます。
費用はどれくらいかかるのか
自己破産にかかる費用の相談が可能です。裁判所の手続き費用や必要書類を集めるためにかかる費用、法律事務所の無料相談であれば具体的な報酬の説明も受けられるでしょう。
費用の目安がわかれば、自己破産の申立てをするかしないかや、費用の工面と申立て時期の判断に役立ちます。
手続き後の生活はどうなるのか
自己破産を検討するうえで費用とともに気になるのが、手続き後の生活ではないでしょうか。一部では自己破産をすると選挙権がなくなるなどといった噂もありますが、不利益について語られる話の多くは、根拠がありません。不明な部分は相談時に質問すれば回答を得られるでしょう。以下に、自己破産に関して誤認されやすい項目とその回答を示します。
項目 | 手続き後の生活 |
収入 | 破産手続き開始決定の後の収入は、本人の新得財産として自由に使えます |
旅行や転居 | 管財事件では旅行や転居に一定の制限があります |
郵便物 | 管財事件では郵便物等が管財人に転送されます |
職業 | 弁護士や警備員など、一定の職種に職業制限があります |
手順などの疑問点
自己破産は破産法にしたがって行われるため、大筋ではどこで行っても違いがありません。しかし、裁判所によって細かい部分が異なるケースがあります。また、依頼先の事務所によっても進め方に特徴があるようです。手順などの疑問点も無料相談で質問できます。
自己破産をする際の相談先
自己破産を考えており詳しく知りたい際の相談先は、主に3つあります。
法テラス
法テラスとは、国が設立した日本司法支援センターの通称であり、法的トラブルを解決するための総合案内所の役割を担っています。法テラスでは法制度の概要について相談できるだけでなく、経済的に困っている場合は弁護士・司法書士との無料法律相談も受けられます。所得等の利用条件が厳しいため、利用できる人は限られます。
市の法律相談
各自治体では、定例の法律相談を実施しているケースがあります。自治体によって異なりますが、借金問題に特化した相談日が設けられているケースもあるようです。無料で気軽に利用できますが、枠が少なく相談相手は選べないケースがほとんどでしょう。
弁護士・司法書士
弁護士・司法書士は自己破産の相談先として、第一の選択肢と考えられます。無料相談を実施している事務所も多数あります。弁護士は自己破産の手続きの代理をはじめとする、さまざまな法律業務を依頼できます。司法書士は扱える業務に限りがあり、自己破産の場合は書類の作成までは可能ですが、手続きの代理はできません。
自己破産についてのよくある質問
自己破産についてよくある質問の中から代表的なものを紹介します。
自己破産すると会社にバレますか?
自己破産をしたことは官報に掲載されるため、絶対に知られないわけではありません。また、以下のケースでは、自己破産が会社に知られてしまうかもしれません。
- 会社から直接、または会社を介して借金している
- 会社が官報をチェックしている(破産は官報に掲載されます)
- 警備員などの職業に就いている(破産者は復権を得るまで欠格となるため)
年金は受給できますか?
自己破産をしても、年金の受給には影響しません。いままでどおり受給できます。
生活保護を受ける場合の受給要件は?
自己破産をしたからといって生活保護の受給ができなくなることはありません。保護費を借金の返済に回すことはできないため、借金を抱えてしまった場合は早めの自己破産が望まれます。また、借金をしてしまう生活状況の見直しが必要です。これから生活保護を受ける場合は、可能であれば自己破産によって借金をなくすことが望ましいといえます。
分割払いは可能ですか?
自己破産の費用を一括で支払うことが困難な場合は、分割払いも可能です。
ただし、すべての弁護士や司法書士が分割払いに対応しているとは限らないため、相談時に確認しておきましょう。
管財人とはなんですか?
管財人とは、破産者の財産を処分したり郵便物のチェックをしたりする、裁判所が専任した弁護士のことです。
破産者の依頼を受けて、自己破産の手続きを代理する弁護士とは役割が異なります。
自己破産は弁護士・司法書士のサポートを受けるのがおすすめ
自己破産は裁判所を介した債務整理であり、必要な種類も多く専門性の高い手続きです。
本人が自力で申立てることも可能ですが、受理されるまでに何度も書き直すといった事態が懸念されます。
一刻も早く生活を立て直すためには、司法書士のサポートを受ける、弁護士に代理人となってもらうのがおすすめです。
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