電話の相手から「スマホで簡単に月収100万円稼げる副業のサポートプランを契約しませんか」などとすすめられたことはありませんか?
魅力的なうたい文句ですが、よく確認して契約をしなければ、トラブルにつながりかねません。
この記事では、電話勧誘販売を入り口ととした副業詐欺についてや被害の実態、契約の解除や返金を受けるための方法などについて解説します。
✓副業詐欺を疑ったときの行動
✓副業詐欺における返金方法
✓クーリングオフとはどのような制度なのか
✓クーリングオフが可能な期間や条件
お金を稼ぐつもりが詐取される「副業詐欺」とは?
副業詐欺とは「スマホ1台で稼げる」「スキマ時間で簡単に稼げる」などと勧誘し、逆にお金を騙し取る詐欺の1つです。
副業詐欺の入り口として「電話勧誘」が用いられるケースがよくあります。
電話勧誘販売とは、事業者が消費者を電話で勧誘し、申込みを受ける取引のことです。電話をいったん切ったあと、消費者が郵便や電話などで申込みをおこなう場合にも該当します。
電話勧誘販売自体は違法なものではありませんが、契約トラブルが生じやすい取引類型として、特定商取引法で規制されています。
電話勧誘販売にまつわる消費者トラブルには、下記のようなケースがあります。
「スマホで簡単」「1日の作業時間 10 分」「定型文を送信したぶんだけ報酬発生」などスマホで簡単な作業をするだけで稼ぐことができるという勧誘をきっかけに、副業の情報商材(ガイドブックやマニュアル)を購入させられました。
その後、電話勧誘により高額なサポートプランも契約させられてしまいました。
以前サプリメントを購入した事業者から、「お元気ですか?」などと電話がありました。
サプリメントに効果を感じられなかったことから次の購入を断ろうとしましたが、事業者がサプリメントによる効能や、ほかの健康食品との飲み合わせによる相乗効果があるかのように説明するので、新しくサプリメントを買う契約をしてしまいました。
水産会社などを名乗る人物から、「以前買ってくれた人に連絡している。コロナ禍の影響で(日本の海産物が海外で問題になっていて)、海産物が売れず困っている。半額にするから買ってほしい」などと電話がありました。
つい承諾したものの、届いた商品は代金に見合わないものでした。
副業詐欺へ誘導する手口
電話勧誘販売にまつわる副業詐欺において、悪徳な事業者が消費者に多額の金銭を支払わせる手口の例は、以下の3つです。
- 副業の紹介サイトやランキングサイトからSNSのトークに誘導される
- 勧誘アカウントから情報商材の勧誘を受ける
- 電話で勧誘され、高額なサポートプランを契約させられる
「スマホで簡単 月収◯万円」「1日の作業時間は数分」「定型文を送信するだけで報酬発生」と勧誘する副業詐欺が横行しているので、注意してください。
副業詐欺を疑ったら…
契約に際して「おかしいな」と思ったときは、下記に挙げた電話勧誘販売にかかるおもな規制を参考に、相手方となる事業者が、適正な勧誘、契約をおこなっているか確認してください。
事業者の氏名等の明示
事業者は、電話勧誘販売をしようとするときは、勧誘に先立ち、消費者に対して、事業者の氏名(名称)、勧誘を行う者の氏名、販売しようとする商品(権利、役務)の種類、契約の締結について勧誘する目的である旨を告げなければなりません。
再勧誘の禁止
電話勧誘販売に関する契約を締結しない意思を表示した者に対する勧誘の継続や再勧誘は、禁止されています。
書面の交付
事業者は、電話勧誘販売について契約の申込みを受けたとき、または契約を締結したときには、消費者に対して、以下のものを渡さなければなりません。
- 商品(権利、役務)の種類
- 販売価格(役務の対価)
- 契約の申込みの撤回(契約の解除)に関する事項
- 事業者の氏名(名称)
- 住所
- 電話番号などを記載した書面
書面の字および数字の大きさは、8ポイント以上にしなければなりません。
書面には、消費者に対する注意事項として、書面をよく読むべきことを赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。
また、クーリングオフの事項についても、赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。
禁止行為
電話勧誘販売において、以下のような行為は禁止されています。
- 契約の締結について勧誘をおこなう際、または契約の申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、事実と違うことを告げること(不実告知)
- 契約の締結について勧誘をおこなう際、故意に事実を告げないこと(事実不告知)
- 契約を締結させ、または申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、相手を威迫して困惑させること(威迫困惑行為(※))
※ 威迫困惑行為……「威迫」とは、脅迫に至らない程度で、人に不安を与えるような行為のことをいいます。
たとえば、「事業者に『買ってくれないと困る』と声を荒らげられ、どうしてよいかわからなくなり契約をしてしまった」「事業者にクーリングオフを申し出たところ、『残金を支払わないと今の家に住めなくしてやる』と言われ、クーリングオフを諦めた」などといった場合が「威迫困惑行為」にあたります。
副業詐欺の返金方法は「クーリングオフ」か「意思表示の取消し」など
副業詐欺の返金方法としてあげられるのが「クーリングオフ」と「意思表示の取消し」です。
クーリングオフは、消費者が契約をした場合であっても、法律で定められた書面を受け取った日から数えて8日間以内であれば、消費者は事業者に対し、申込みの撤回や契約の解除ができます。クーリングオフの詳細については、次章で詳しく解説します。
事業者が契約の締結について勧誘をおこなうとき、以下に挙げられる行為をしたことで消費者が誤認し、契約の申込みまたはその承諾の意思表示をしたときには、その意思表示を取り消すことができます。
- 事実と違うことを告げられた場合であって、その告げられた内容が事実であると誤認した場合
- 故意に事実を告げられなかった場合であって、その事実が存在しないと誤認した場合
なお副業詐欺における返金方法は、以下の記事も参考にしてください。
インターネットを閲覧しているとき、「簡単高収入な副業!」「誰でも簡単に月収〇〇万円!」「●●するだけで高収入!?」などという謳い文句を掲げている広告などを目にしたことはありませんか? これらは副業詐欺です。 今回はこのスマホ副業詐欺[…]
クーリングオフとは
クーリングオフとは、不意打ちの勧誘や強引な営業によって消費者が冷静に判断できなかった場合の救済策として、特定商取引法に基づく制度です。これにより、一定期間内であれば契約を無条件で解除できます。
適用期間は契約形態によって異なり、違約金や解約手数料は発生しません。
クーリングオフの定義
特定商取引法では、特定の契約において、契約をした後でも一定の期間内であれば無条件で契約を解除できるクーリングオフの制度を設けています。これは、訪問販売や電話勧誘など、冷静な判断をしにくい状況で結ばれた契約から消費者を守るための制度です。
クーリングオフできる6つの取引
クーリングオフが適用される契約形態は以下の6つです。
1. 訪問販売
家庭や職場への訪問販売、キャッチセールス、アポイントメントセールスなど、事業者が不意打ちで消費者に直接、商品やサービスを勧誘・販売する取引のことです。
例:新聞の定期購読やリフォーム工事の契約勧誘など
2. 電話勧誘販売
事業者が消費者に対して、販売の目的を告げずに突然電話をかけ、商品やサービスを契約させる販売形態のことです。電話を一旦切った後に郵便や電話等で申込みを行った場合も該当します。
例:電話での保険商品やインターネット回線の契約勧誘など
3. 連鎖販売取引
個人を販売員として勧誘し、その個人にさらなる販売員を勧誘させることで組織を拡大していく取引形態のことを指します。いわゆるマルチ商法と呼ばれるものです。
例:サプリメントや健康食品の販売ネットワークなど
4. 特定継続的役務提供
一定期間にわたって継続的に提供されるサービスに対して、高額な対価の支払いが伴う契約形態です。
例:エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室(現在はこの7つが対象です)。
5. 業務提供誘引販売取引
「副業」「自宅でできる仕事」など、仕事を提供するので収入が得られるといった内容で消費者を勧誘し、仕事に必要だとして商品やサービスを購入させる契約形態のことです。
例:使用する商品代金の負担を伴うモニターアルバイトなど
6. 訪問購入
事業者が消費者の自宅などを訪問し、その場で物品を買い取る取引のことです。
例:不要品の買い取り(貴金属、ブランド品など)
クーリングオフの期間
特定商取引法では、6つの方法で行う契約に対し、一定の事項を記載した法定書面と呼ばれる書類の交付を義務付けています。
クーリングオフは、この書面を受け取った日から数える適用期間内に、書面または電磁的記録(SNS、電子メール、サイトの専用フォームなど)で申し出る必要があります。
期間は契約形態次第で以下のように異なります。
ただし、事業者が法定書面を渡してくれなかったり、解約できないと嘘をつかれたり、脅されたりするなどしてクーリングオフの妨害行為を受けた場合はこの限りではありません。
適用期間が延長され、いつでもクーリングオフすることが可能です。
また、渡された法定書面の内容に不備があった際も同様です。本来の期間は無効となり、不備のない法定書面が交付されるまで適用期間は進行しません。
クーリングオフは送付時に効力が発生するため、8日目あるいは20日目に行うものも有効です。
クーリングオフの流れ
ここでは、副業詐欺の被害でクーリングオフを行うケースとして解説します。
1.適用期間を確認する
まずは適用期間を確認しましょう。前述のとおり、自身が行った契約方法によって異なるため注意が必要です。
当事務所の相談実例でいうと、法定書面に不備があるケースやクーリングオフ妨害を受けているケースがいくつか見受けられます。これによって適用期間が変わるため、自己判断が難しい場合は、クーリングオフの実績が豊富な司法書士もしくは弁護士に相談してみましょう。
2.クーリングオフの申請をする
クレジットカードで支払いをしている場合は販売会社とクレジットカード会社両方へ同時に通知を行います。
クーリングオフ申請時には、以下の事項を記載します。
- 契約を解除する意思表示
- 契約年月日
- 商品名
- 会社名
- 担当者名(わかる場合)
- 通知年月日
- 自分の氏名と住所
書面で行う場合は必ずコピーを取り、特定記録郵便や簡易書留など記録が残る方法で代表者宛に送付しましょう。
内容証明郵便もおすすめです。消印が有効なため、期間ギリギリの申請になってしまう場合は、翌日扱いにならないよう注意してください。
電磁的方法で行う場合は、契約書面などを確認し、電磁的記録によるクーリングオフの通知先や具体的な方法が記載されているかを確認します。記載がある場合は、それを参照して通知しましょう。
電磁的記録の場合、手元に記録が残る送信方法がほとんどかと思いますが、専用フォームからクーリングオフ申請をするときはそうとは限りません。必ずスクリーンショットを撮りましょう。
クーリングオフができる・できないケース
副業詐欺の被害例をあげて見ていきましょう。
- Aさんはインターネット上で「即日5万円が稼げる」「スマホひとつで簡単作業」と紹介されている副業の募集を見つけました
- 応募するために募集元のLINEアカウントを追加しました
- 副業を始めるために説明マニュアルを購入するよう案内され、指定されたWebサイト上で購入しました
- マニュアルの販売ページには一切の返品、返金はできない旨記載がありました
- 購入後、カウンセリングのために電話で話したいと言われ日時を提示させられました
- 電話の最中、“このコースなら月に100万円は稼げる“と新たに追加でプランの説明をされて契約しました
- 怪しいと思い、翌日にクーリングオフの申請をしました
この例では、「マニュアルの購入」「プランへの加入」という2つの契約が存在しています。これを踏まえて解説していきます。
クーリングオフできるケース
この例でクーリングオフの対象になるのは「プランへの加入」契約です。
プランの勧誘は電話で行われていますが、そもそもAさんはこれをカウンセリングのための電話と伝えられていました。
つまり、この募集元は契約があるという目的を告げずにAさんへ電話をかけて当該プランへ加入させており、電話勧誘販売に該当するためクーリングオフの対象となります。
では「マニュアルの購入」はどうなるでしょうか?
クーリングオフできないケース
「マニュアルの購入」はクーリングオフ対象外です。
なぜなら、Aさんはマニュアルを通信販売で購入しているからです。
副業広告を見たAさんが自らの意思で購入しており、不意打ちで購入させられた状況とはいえないためです。
通信販売では返品可否やその条件について特約が設けられている場合、それに従います。
逆に、特約がない場合は商品を受け取った日を含めて、8日以内であれば返品できます。
Aさんの場合は返品・返金不可の特約があったためこれに従います。
あわせて、以下の場合はクーリングオフが適用されないため注意が必要です。
- 店舗での購入
- 通信販売
(返品特約が別途設けられている場合は特約に従う) - 使用後の消耗品
- 3,000円未満の現金取引
(6つの契約形態でも、金額がごくわずかでありクーリングオフによって消費者を保護する必要性が低いと考えられるため)
副業詐欺を始めとする詐欺まがいの悪徳商法では、通信販売でマニュアルや情報商材を購入させる手法が多いです。
しかし、クーリングオフが適用外でも被害を解決する方法はあります。次の項目で紹介しますので、万が一の際には参考にしてください。
クーリングオフできない場合の相談先は?
クーリングオフができない場合の相談先としては「消費者ホットライン」や「司法書士・弁護士」が適任です。
消費者ホットライン
消費者庁が設置している、消費生活相談窓口の連絡先を案内するためのサービスです。
電話番号は「188」で、居住地域の消費生活相談窓口へ案内してくれます。土日祝日で消費生活センター等が開いていない場合は国民生活センターに繋がります。
消費生活センターや国民生活センターでは、副業詐欺被害を含め消費生活全般に関するトラブルの相談に無料で対応しています。
司法書士や弁護士
相談や解決方法に向けたアドバイスのほか、代理人として返金交渉を行うことが可能です。
クーリングオフ対象外の契約でも、法律に基づいて返金交渉ができる場合が多くありますので、まずは相談してみるのがいいでしょう。
消費者トラブルを得意とする司法書士や弁護士の力を借りることで、スムーズな解決が期待できます。
クーリングオフをはじめ、副業詐欺の被害額を取り返す方法を当事務所が一緒に考えます!
大切なお金が詐欺で奪われたという事実は、心身に多大なストレスを与えます。
このような状況を解消するには、支払ったお金を返してもらうべく動くことが肝要です。
まずは被害にあわないようにすることが大切ですが、被害にあってしまったときは、そのあとに取るべき行動を考えましょう。
被害の回復は、時間との勝負でもあります。
もちろん、時間が経っているからといって、私たちは返金交渉を諦めません。
「被害にあったかもしれない」と思ったときは、すぐに司法書士など詐欺被害の解決を専門とした法律の専門家にご相談ください。
丹誠司法書士法人では、ご相談を無料でお受けしております。
ご相談の結果、詐欺の被害にあっていたとわかれば、ただちに返金に向けて対応を始めます。
不安な気持ちを解消するために、まずは私たちにご相談ください。
ともに不安や問題を解決し、平穏な日常を取り戻しましょう。