生活を立て直すために任意整理を検討しているものの「家族に悪影響が及ぶのでは?」と不安になっている方も多いのではないでしょうか。
結論から言えば「家族が保証人となっている債務」を対象としない限り、任意整理による家族への直接的な影響は少ないです。
ただし、状況によっては配偶者や子どもに間接的な影響が及ぶことがあります。
本記事では、任意整理が家族に及ぼす影響や対処法について詳しく解説するとともに、任意整理の相談ができる窓口も紹介します。
✓任意整理で家族に悪影響を及ぼさないための対処法
✓任意整理のデメリットも含めて、相談できるおすすめの窓口
任意整理による家族への影響が及ばないこと
任意整理とは、裁判所を介さずに債権者(貸金業者やクレジットカード会社)と直接交渉し、将来利息の減額や返済期間の延長を目指す手続きのことを指します。
「任意整理をすると家族にも影響を及ぼすのでは」と心配されている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、借金に関する契約は債権者と債務者の間で交わされるものであり、借金をした本人以外に不利益が生じるケースは少ないです。
ただし、家族が借金の連帯保証人になっている債権を対象とする場合は、この限りではありません。
任意整理が家族へ悪影響を及ぼすと誤解している方が多い点について、以下にまとめて回答します。
- 車・住宅・家財道具などの財産を差し押さえられる心配はない
- 家族の信用情報に影響しない
- 子どもの進学・就職・結婚にも影響はない
- 家族に秘密で任意整理できるケースも多い
なぜ任意整理をしても家族に影響が及ばないのか、それぞれについて解説します。
車・住宅・家財道具などの財産を差し押さえられる心配はない
債務整理の一つである自己破産の場合、借金がすべて帳消しになる代わりに車や住宅、家財道具などの高価な財産が処分されてしまいます。
一方、任意整理の場合は財産を差し押さえられる心配がないため、同居している家族に影響は及びません。
ただし、ローンやクレジットの残債(ざんさい:返済していない残りの金額)が残っている場合は、物品が引き上げられる可能性があります。
とはいえ、任意整理は対象となる債権者を選べるため、ローン会社やクレジットカード会社を外せば、車や住宅を手放さずに済みます。
家族の信用情報には影響しない
任意整理を行った本人は、クレジットカード会社や金融機関、ローン会社などの信用情報機関が管理する信用情報に「事故情報」が記録・保存されます(5~10年間)。
事故情報が残っている間は、任意整理をした本人が保有するすべてのクレジットカードが使えなくなり、ローンの利用や新たな借入れもできません。
本人名義のクレジットカードで「家族カード」を発行している場合は利用停止になります。
しかし、信用情報は個別に記録されているため、家族の信用情報まで傷つくことはありません。
家族名義のクレジットカード・カードローンの使用に関しては影響がなく、通常どおり使えます。
子どもの進学・就職・結婚にも影響はない
「任意整理することで、子どもが進学・就職する際に不利になるのではないか」と心配している方もいるかもしれません。
しかし、学校や会社が親の任意整理の履歴を調べることはないため、子どもの進学や就職には影響しません。
また、本人や家族の戸籍・住民票にも任意整理の記録が残らないので、子どもが結婚する際も問題になりません。
子どもが自分から話さない限り、就職や結婚に影響を及ぼすことはありません。
家族に秘密で任意整理できるケースも多い
任意整理はほかの債務整理のように裁判所を通さないため、家族や会社に秘密で手続きできるケースが多いです。
任意整理の手続きにおいて、家族の収入や支出に関する細かい資料の提出が求められないため、家族に知られる可能性は低いでしょう。
ただし、任意整理後に返済を延滞してしまうと、債権者から訴訟を起こされる可能性があります。
この場合は債務者本人の自宅に訴状が届くため、家族に気づかれる可能性があります。
後述しますが、家族が借金の保証人になっている場合も、知られてしまいます。
また、司法書士・弁護士に任意整理を依頼すると債権者からの督促が止まり、家族に知られるリスクをさらに軽減できます
任意整理で家族に影響が及ぶことやその対処法
続いて、任意整理をすることで家族に影響が及ぶ場合やその対処法について解説します。
家族が保証人になっている場合は返済請求がいく
前述のとおり、借金の契約は債権者と債務者の間で交わされるものです。
そのため、任意整理したからといって必ずしも家族が借金を肩代わりする必要はありません。
ただし、家族が保証人や連帯保証人になっている場合、本人が返せなくなった借金の返済義務を家族が負うことになります。
配偶者が保証人になっている場合、たとえ離婚しても「保証人としての返済義務」はなくなりません。
家族に迷惑をかけたくない場合は、家族が保証人になっている借金を任意整理の対象から外すのも一つの方法です。
同居家族もクレジットカードやローンを申し込めなくなることがある
任意整理をしても家族個人の信用情報には影響がなく、クレジットカードやローンも申込者本人の情報をもとに審査されます。
ただし、同居している家族に収入がない場合は、クレジットカードやローンに申し込めなくなります。
例えば専業主婦(主夫)がクレジットカードやローンに申し込んだ場合は、配偶者(任意整理をした本人)の返済能力が確認されるため、審査は通りません。
また、未成年の学生がクレジットカードを作る際も親の同意や返済能力が確認されるため、親の事故情報が登録されていれば審査に通りません。
新たにクレジットカードを申し込めなくても、デビットカードやプリペイドカード、キャッシュレス決済(QRコード決済)などは問題なく利用できます。
債務整理をした本人が亡くなると家族に借金が相続される
相続は資産だけでなく負債も対象に含まれます。
そのため、任意整理をした本人が完済前に亡くなり家族が財産を相続すれば、借金も受け継ぐことになります。
この場合は家族が相続を放棄すれば、亡くなった方の借金を負う必要はなくなります。
ただし、相続を放棄するとすべての遺産を手放さなければならないため、プラスの財産も受け取れなくなる点に注意が必要です。
子どもの奨学金の保証人になれない
親が任意整理をしても、子どもが奨学金を借りることは可能です。
しかし、任意整理の事故情報が登録されている期間(5~10年)は、子どもの奨学金の連帯保証人にはなれません。
この場合、任意整理をしていない配偶者や子どもの祖父母、親戚などに保証人となってもらう方法があります。
連帯保証人をお願いできる方がいない場合は、日本学生支援機構の「機関保証制度」を利用すれば、連帯保証人なしで奨学金を借りられます(ただし保証料の支払いが必要)。
最低5年は教育ローンが組めない
任意整理をすると、個人信用情報に事故情報が登録されます。事故情報が消えるまでには約5~10年程度かかり、その間はあらゆるローン審査に通りません。
銀行や信用金庫、信販会社など民間の教育ローンだけでなく、日本政策金融公庫が実施している国の教育ローンの利用も、約5~10年程度は難しくなります。
もちろん、任意整理をしていない配偶者に信用情報の問題がなければ、配偶者の名義で教育ローンを組めます。
任意整理のデメリットも含めて相談できるおすすめの窓口
任意整理を検討している際は、家族への影響も含めて専門機関へ相談することをおすすめします。ここでは、任意整理の相談ができる窓口を紹介します。
弁護士・司法書士
任意整理の手続きには専門知識や交渉力が必要なため、個人で進めるのではなく弁護士や司法書士に相談します。
任意整理の経験や実績が豊富な弁護士・司法書士に依頼すれば、無理なく返済できるよう債権者に和解交渉してくれます。
弁護士・司法書士が代理人になった旨を知らせる「受任通知」が債権者のもとに届いた時点で、催促がストップするのも大きなメリットです。
また、弁護士・司法書士に任意整理を依頼することで「本人宛の郵便物に事務所名を記載しない」「依頼者本人の携帯電話に連絡する」など、家族に発覚しにくいよう配慮してもらえます。
ただし、司法書士が扱えるのは債権者1社あたり元金140万円以下の債務に限ります。
日本クレジットカウンセリング協会
日本クレジットカウンセリング協会(JCCO)とは、消費者の保護を目的とした公益財団法人です。
借金の返済に困っている方・多重債務を抱えている方に対し、電話や面談で無料相談を行っています。
日本クレジットカウンセリング協会では弁護士や消費生活アドバイザー、臨床心理士などが共同でカウンセリングし、収支に見合った弁済計画の策定や債権者との交渉もしてくれます。
任意整理も無料で対応可能ですが、自己破産・個人再生・特定調停などほかの債務整理に関してはアドバイスのみで、手続きを代理することはできません。
消費生活センターや市役所・区役所の相談窓口
全国の市町村に設置されている消費生活センターでも、任意整理や多重債務に関する無料相談を行っています。
消費者ホットライン(電話番号:188)に連絡すると、最寄りの消費者センターの窓口につながります。
また、市役所・区役所の相談窓口や福祉課でも任意整理の相談ができます。
ただし、消費生活センターや市役所・区役所で対応できるのはアドバイスや情報提供のみです。任意整理の手続きを依頼することはできません。
まとめ
任意整理はほかの債務整理よりも家族への影響が少なく、車や住宅などの財産を残せます。
ただし家族が保証人になっている場合は、家族に返済義務が生じるため「保証人がついている借金を任意整理の対象から外す」といった対策が必要です。
任意整理によって家族にどのような影響が及ぶのかは、個人の状況によっても異なるため、司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
丹誠司法書士法人では、あなたの状況を詳しくお伺いし、最適な債務整理の方法をご提案します。
借金の負担を軽減したい方・生活を立て直したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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