借金が返済できず任意整理したものの、決められた金額が払えないため、延滞してしまう人がいます。任意整理を延滞すると、どのようなデメリットがあるでしょうか。
この記事では、任意整理後に月々の返済額を払えないことから延滞した場合、どのようなことが起こり得るのか詳しく解説します。
✓任意整理後の支払いを延滞した場合はどうなるのか
✓任意整理しても借金が払えないときは?
✓任意整理後に延滞した時の相談先
借金を払えないときに行う「任意整理」とは?
任意整理とは、借金をした人が債権者と交渉した上で、長期の分割払いで少しずつ返済できるようにする手続きです。任意整理の開始から終了までは3〜6ヵ月程度かかり、和解契約を結んでから返済が再開します。
また任意整理を司法書士に依頼する場合、債務額は1件あたり140万円までとなっているため注意が必要です。
任意整理後の分割払いを払えないと、どうなるのか
画像:当事務所で使用している和解書(和解合意書)の見本です。
任意整理では和解が成立すると、和解契約を結んで借金の返済を再開します。
和解の内容を記載したものが「和解書(和解合意書ともいう)」です。和解書には例として以下のような文言が記載されます。
- 甲(任意整理をした人)が支払を◯回分(※)以上怠った時は当然に期限の利益を失う
- (上記の場合)直ちに乙(債権者)に対して和解金の残金,及びその元金に対する支払期日の翌日から支払済みに至るまで年◯%の割合による経過利息を一時に支払う
※見本では2回と記載していますが、必ずしも2回分という条件で和解するわけではありません
ここでは支払いを延滞した場合、どのようなことが起こるのかについて解説します。
支払いを1回延滞すると、債権者から催促が来る
任意整理後の返済を1回延滞すると、債権者から催促の連絡や請求書が届きます。任意整理を依頼した事務所を経由して返済している場合はその事務所に、自分で返済している場合は自宅に連絡が届きます。
「催促が来るだけなら滞納してもいい」というわけではありません。なるべくすぐに返済しましょう。また、和解書の内容次第では、1回の延滞から次項で解説する「期限の利益の喪失」に発展する可能性もあります。
和解書で定められた回数以上、支払いを延滞すると期限の利益を失う
期限の利益とは任意整理をした人と債権者の間で交わされる、期日までに借金を返済すればよいという約束を指します。
任意整理をした人の滞納が重なり、支払っていない金額または回数が、和解書で定められた内容を超えると、「期日までに借金を返済すればよい」という利益がなくなり、残された借金を一括請求されることになるのです。
期限の利益がなくなることを「期限の利益の喪失」と言い、民法137条で定められています。
そもそも和解契約は借金を分割払いで返済する内容となっているため、期限の利益を失うと任意整理をした人が無理なく借金を返済するための計画が崩れてしまうことになります。
契約通りに借金を完済するためにも、支払いに必要な費用は、期日までに必ず準備しましょう。
遅延損害金を支払わなければならない
任意整理の和解書には「期限の利益を失った日の翌日から支払い済みに至るまでの残金に対する年〇%の割合による遅延損害金を支払う」と記載されていることもあります。
そのため支払いを一定以上、延滞した場合は残された借金を一括で支払うだけではなく、和解書に定められた遅延損害金を支払わなければなりません。
遅延損害金は支払いを滞納しなければ、支払う必要のないお金です。支払額を増やさないためにも、決められた返済の期日は守りましょう。
任意整理をしても借金が払えないときは?
任意整理をしても借金が払えないときは、どのように対処すればよいのでしょうか。
3つご紹介します。
1.他の債権者の借金を任意整理する
任意整理をしても返済を滞納してしまう場合、他の債権者からの借金も任意整理に含めることを検討してみましょう。
追加で任意整理する形であり、毎月の返済額を軽減し延滞を予防するというメリットがあります。
しかし「任意整理後に退職した」などの理由から安定収入がない場合は、この方法では解決につながらないこともあるので注意しましょう。
2.個人再生を検討する
個人再生とは、裁判所に個人再生手続の申し立てをして、借金の元本を減らす手続きです。概要は以下の通りです。
対象者 | 借金の返済が困難な人 |
要件 |
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メリット | 再生計画が認められて分割返済が終了すれば、残りは免除される |
費用 |
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個人再生を行うことで、法律に基づく最低弁済額まで借金を減らせるので、任意整理をしても借金が払えない場合、弁護士や司法書士に個人再生ができないか相談してみましょう。
3.自己破産を検討する
自己破産とは、裁判所に申し立てをして借金の返済を免除してもらうことです。
自己破産の流れは以下の通りです。
- 裁判所によって債務者が返済できない状態になっているかを審理される
- 返済ができないと判断された場合、破産手続が開始
- (財産がある場合)破産管財人が選ばれ、財産をお金に変えて全ての債権者に公平に分配する
(財産がない場合)破産管財人は選ばれず、破産手続の開始と同時に終了(廃止)が決定する
- 裁判所に免責申立をする
- 裁判所によって免責してもよいかどうかが審理され、問題がなければ免責許可が下りる
自己破産にかかる費用は収入印紙代、郵便切手代、予納金などがありますが、詳細については裁判所の破産受付係にお問い合わせください。
自己破産は、任意整理や個人再生を行っても、借金の返済が困難な場合の「最終手段」となるので、弁護士や司法書士に相談し慎重に検討しましょう。
任意整理をしても借金が払えないときの相談先
もし任意整理後に延滞してしまった場合、どこに相談すればよいのでしょうか。
債権者に自分で支払いをしている場合
債権者に自分で借金を返済している場合は、まず債権者に相談しましょう。
任意整理後に延滞するというのは、和解書に記載された内容が実行できないということでもあるため、信頼関係を崩さないためにも早めに相談するのが大切です。
相談時には、次の内容を整理して債権者に伝えましょう。
- 返済ができない理由
- 返済が再開できる日付
- 今後は返済が遅れない根拠
債権者の質問には丁寧に回答し、誠実に対応するのが重要です。
債権者に司法書士・弁護士経由で支払いをしている場合
債権者に司法書士や弁護士経由で返済している場合は、まず事務所に連絡しましょう。伝える内容は前の項目でご紹介した相談事項と同様です。
しっかりと連絡すれば、滞納理由を債権者に伝えてもらったり、再度交渉して支払いまでの期日に猶予をもらったりすることもできるため、早めの連絡を心がけましょう。
借金が払えないとお悩みの方は、丹誠司法書士法人へ!
任意整理後の返済額が払えないと、期限の利益を失って一括返済と遅延損害金を請求されてしまいます。
この記事も参考にして、任意整理後に支払いができない場合は、まず債権者や司法書士・弁護士に連絡し、対処法について相談しましょう。
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