増えすぎた借金を解決する方法として、債務整理は有効な手段です。しかし、債務整理の方法は複数あり、それぞれにデメリットが存在します。
この記事では、債務整理の種類やデメリットを解説します。また皆さんが気になるクレジットカードや家族への影響などについても触れているため、参考にしてください。
✓債務整理のデメリット
✓借金返済が困難でもしてはいけないこと
✓債務整理のよくある質問
債務整理の方法
債務整理とは利息や元本を減額することで、借金を無理なく返済できるように整える手続きを指します。債務整理の方法は、以下の4種類です。
- 任意整理
- 特定調停
- 個人再生
- 自己破産
任意整理とは、司法書士や弁護士が債務者(お金を借りている人)の代わりに債権者(お金を貸す人)と交渉し、和解する手続きです。将来利息の削減や長期分割払いについて、債権者に合意してもらえるよう交渉します。特定調停は、効果としては任意整理と酷似していますが、裁判所を介した手続きとなります。
個人再生は、元本の大幅な減額と長期分割払いを認めてもらう制度です。継続的な収入見込みがあり、債務総額が5,000万円を超えない人が対象です。自己破産は、債務を全額免除してもらう制度です。ただし、一部の債権は非免責債権として支払い義務が残ります。借金をすべて免除できるため、債務整理手続きの中でも一番効果が大きい制度です。
債務整理手続きに共通するデメリット
債務整理を行うと、信用情報機関に事故情報が登録されます。世間ではこの状態を、「ブラックリストに載った」と表現されることもありますが、実際はブラックリストというものは存在しません。
任意整理や特定調停、個人再生は完済から約5年、自己破産の場合は免責許可決定から5年間、事故情報が掲載されるため新規借り入れの審査に影響が出ると考えられます。クレジットカードの新規作成や車・住宅のローンを組むことが難しくなる可能性が高いです。
それぞれの債務整理のデメリット
それぞれの債務整理手続きで、得られる効果が異なります。そのため、手続きによって生じるデメリットにも違いがあります。ここでは各手続きのデメリットについて解説します。
任意整理のデメリット
任意整理の場合、元本を減らすことは期待できません。利息の削減と長期分割払いの合意が主な交渉内容となるためです。
借り入れが短期間だと、将来利息の削減が認められなかったり、そもそも和解が成立しなかったりする可能性があります。これは貸金業者が、利息で収益を得るためです。
任意整理のデメリットやその対処法は、以下の記事で詳しく解説しています。
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特定調停のデメリット
特定調停のデメリットは、手続きのすべてをご自身で行わなければならない点です。
原則、ご自身での申立であるため、司法書士や弁護士へ依頼しないため費用は抑えられます。しかし、交渉力や論理的主張が求められるため、個人で行うにはハードルが高い手続きです。
不調に終わる可能性もあり、平日に裁判所へ出向く必要があるため、仕事をしている人にとっては難しいでしょう。
個人再生のデメリット
個人再生は元本の大幅な減額が見込めますが、返済の目途が立たなければ認められません。また、対象となる債権を選択できないため、たとえば保証人がついている債権だけ手続きから除外することはできません。
個人再生では、家計の収支について裁判所に提出する必要があります。そのため、家族に知られずに手続きを進めるのは難しいでしょう。
さらに、個人再生を行ったときは国が発行する官報という媒体に氏名・住所などが掲載されます。大きなデメリットのように感じるかもしれませんが、官報を日常的に見る方はほとんどいません。家族以外の周囲に個人再生を行ったことを知られるリスクは低いでしょう。
自己破産のデメリット
自己破産は、個人再生と同じく一部の債権を免除して手続きを進めることはできません。また、家計の収支についても裁判所に提出するため、家族に内緒で手続きを進めることは困難です。氏名・住所が官報に掲載される点も同様です。
自己破産に特有のデメリットとして、破産申立から免責決定を受けるまで、一部の職業に就けない(制限がある)という点があります。これらは法律で定められており、たとえば宅地建物取引士や警備員などが挙げられます。
自己破産をした場合、一部の財産を除きすべてを手放す必要があります。一部の財産とは、20万円以下の預貯金や年数の経った車などです。
財産も負債もすべて手放して、一度経済状況をリセットするイメージを持つとよいでしょう。
借金返済が困難でも絶対NGな4つの行動
借金が膨らみ返済に追われていると、冷静な判断がしにくくなります。そのような場合でも、次の4つの行動は絶対に避けましょう。いずれも状況を悪化させてしまいます。
返済のために追加で借り入れする
お金を借りて返済しても借金は減りません。それどころか、新たに借り入れた業者にも返済しなければならず、利息の返済に追われてしまいます。
一時的に凌いだように思えますが、余計に苦しくなるだけです。追加でお金を借りる前に、司法書士や弁護士に相談しましょう。
督促を無視する
単に債権者の心証が悪くなるからではありません。督促を無視し続けると自宅へ訪問されたり、勤務先に連絡されたりするリスクがあるからです。最終的には強制執行により財産を差し押さえられる可能性があります。
返済の目処が立たずに無視してしまっている場合は、司法書士や弁護士に債務整理を依頼しましょう。債務整理を依頼された司法書士や弁護士は、受任通知を債権者に送ります。これにより、取り立て行為を一時的に止められます。
クレジットカードを現金化する
クレジットカードの現金化とは、カードのショッピング枠を利用して現金を得る行為です。たとえばクレジットカードを用いて商品を購入し、転売することが挙げられます。
違法ではありませんが、カード会社の利用規約で禁止されていることが多く、違反するとペナルティを課されます。具体的には、カード利用額の一括支払いや強制解約などです。
商品を転売しても、使った金額以上の現金を得られることはありません。状況を悪化させるため、絶対に行わないようにしましょう。
ギャンブルに頼る
一攫千金を夢見てギャンブルに手を出してはいけません。
運よく勝てれば、一時的に借金を返済できるでしょう。しかし、負けてしまえば返済どころか日々の生活すら圧迫されます。
さらに、ギャンブルは自己破産の免責不許可事由に該当します。「温情」で認められるケースもありますが、それを当てにするのは避けましょう。
裁判所に裁量免責を認めてもらえなければ、自己破産ができません。
堅実に状況を好転させるため、早めに債務整理を検討しましょう。
債務整理手続きは、弁護士か司法書士にお任せください
債務整理は、弁護士と司法書士のみ受任できる業務です。
司法書士に債務整理を依頼する際は、2つの注意点があります。1つは、司法書士は借入額が140万円までの案件を扱うと法律で決まっていることです。これは債権ごとの金額のため、借り入れ合計額が140万円を超えていても、1社ごとの金額が140万円を下回っているなら依頼できます。
もう1つは、個人再生と自己破産を選択する場合、書類作成のお手伝いしかできないことです。個人再生と自己破産の手続きの管轄は地方裁判所ですが、司法書士が代理人となれるのは簡易裁判所のみと法律で定められています。一方で、弁護士は債務金額の制限はなく、代理人としてすべての手続きを任せられます。
相談先の選ぶ際、もっとも重視すべきポイントは「事務所の実績」。弁護士と司法書士、どちらに依頼する場合でも、豊富な実績をもつ事務所を探してください。
債務整理手続きのよくある質問
債務整理手続きに関するよくある質問を紹介します。手続きを検討する際の参考としてください。
債務整理をするとクレジットカードは使えなくなりますか?
個人再生や自己破産の場合は使えなくなります。一方で、任意整理の場合はクレジットカード会社を対象から外せば、現在使用しているカードは今までどおり使用できる可能性もあります。
ただし、カードの更新時や中途審査が行われた際に、使用停止になる可能性があるため注意が必要です。
債務整理をしたら必ず車を手放さなくてはなりませんか?
任意整理であれば、所有権留保が付かない借り入れ、所有権留保があったとしてもローン会社を整理対象から除外すれば手放さずに済みます。
個人再生の場合は、ローンの支払いが終わっているかどうかによります。支払中だとローン会社に引き上げられますが、完済していれば引き続き所有できます。ただし、車の価値が高ければ、返済額が上がる可能性があります。
自己破産の場合は原則処分対象です。ただし、評価額が20万円を下回っていれば処分しなくてよい場合もあります。
債務整理をしても携帯電話は使い続けられますか?
任意整理の場合は、携帯電話会社を債務整理の対象から外せば問題ありません。それ以外の手続きの場合は、電話料金を滞納していたり、端末代金の分割払いが未完了だったりすると、強制解約の可能性があります。
家族の財産も債務整理の対象に含まれてしまいますか?
債務整理は債務者個人を対象とする手続きです。そのため、保証人になっていない限り家族の財産に影響はありません。
ただし、自己破産は財産を処分するため、住宅や車を手放すことで同居の家族に影響を及ぼす可能性があります。
住宅ローンのペアローン等を組んでいる方は、すぐに司法書士や弁護士への相談をお勧めいたします。
生活保護を受給していても債務整理はできますか?
生活保護を受給している場合は支払能力が認められないため、任意整理や個人再生は難しいでしょう。自己破産を検討する必要があります。
債務整理を依頼するための費用が捻出できない場合は、法テラスの費用立替制度の利用を検討しましょう。あわせて償還免除の手続きをすれば、費用をかけずに自己破産できます。
まとめ
債務整理は、借金という経済的・精神的負担から解放されるための手段です。しかし、大きなメリットがある反面、デメリットも存在します。
ご自身の経済状況はもちろん、債務整理をすることのデメリットも考えたうえで手続きへ踏み切ってください。債務整理を行うならば、司法書士や弁護士へ依頼するのがお勧めです。
丹誠司法書士法人では無料相談を受け付けています。「自分は債務整理が必要か、不要か」なども含めてお話を伺うため、ぜひお問い合わせください。
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