「借金を減らしたいけど、自己破産せずに済む方法はないかな…」
自己破産はできるだけ避けたいけど、毎月の返済が苦しいという方も多いと思います。
この記事では、家などの資産を守りながら借金の返済ができる個人再生について解説します。
- 個人再生の概要と種類
- 個人再生が利用できる条件
- 個人再生が認められない事例
- 個人再生のメリットとデメリット
- 個人再生の手続きの流れ
個人再生とは
個人再生とは、借金の返済が困難になった場合に裁判所へ申し立てを行い、借金を一部減額したうえで返済計画を立て、その計画に基づいて返済する債務整理の方法です。
任意整理の場合は利息のカットが主な効果ですが、個人再生では借金の元金自体を減額することが可能です。
ただし、税金や養育費は減額や免除の対象にならないため注意が必要です。
手続きでは、債権者名や借入金額、返済期限などの情報をまとめることが求められます。
また、給料明細書や不動産登記簿謄本、税務署からの収入証明書などの書類を準備する必要があります。
「自己破産はしたくないけど任意整理では思ったよりも借金が減らない」といった悩みを抱えている方は、個人再生を検討してみるのもいいかもしれません。
「個人再生の相談先をすぐに知りたい」という方は、以下の記事も参考にしてください。
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個人再生の種類と条件について
個人再生は2種類あります。
債務者の職業や借金総額など、条件によってどちらが有利になるかは個々の状況によって異なります。
それぞれの違いについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
小規模個人再生手続
小規模個人再生手続は、主に個人事業主などの規模が小さい事業を運営している方を対象とした手続きです。
条件は以下のとおりです。
- 住宅ローンを除く借金総額が5,000万円以下であること
- 継続的かつ安定した収入の見込みがあること
- 債権者や債権額の過半数が返済計画に反対しないこと
自営業者向けの手続きですが、実際のところ条件さえ満たせればアルバイトや会社員などの方も選択は可能です。
給与所得者等再生手続
給与所得者等再生手続は会社員などのサラリーマンを対象とした手続きです。小規模個人再生とは異なり、債権者からの同意は必要としません。
条件は以下のとおりです。
- 住宅ローンを除く借金総額が5,000万円以下であること
- 継続的にかつ安定した収入の見込みがあること
- 給料の変動幅が20%以下であること
- 可処分所得2年分以上の支払いが可能であること
会社員であっても、ほとんどの場合は給与所得者等再生手続ではなく小規模個人再生手続を利用することが一般的です。
その理由として、債権者の同意が得られない事例は少なく、借金の総額を大幅に減額できる小規模個人再生手続の方が債務者にとって有利だからです。
小規模個人再生では、借金の総額や収入などによって異なりますが、総額の80〜90%が減額される可能性があります。
一方、給与所得者等再生手続では、最低弁済額として可処分所得の2年分以上を返済する必要があります。
つまり、借金の残額が約500万円、可処分所得(手取りから必要経費を差し引いた金額)が2年で480万円の場合、借金の減額幅は20万円に留まります。
そのため、会社員でも小規模個人再生手続を利用した方が、毎月の支払いが軽減される場合があります。
個人再生が認められないケース
個人再生は申し立てを行ったところで必ずしも認められるわけではありません。
民事再生法第25条に記載されている要件に当てはまると、裁判所の判断によって棄却されることもあるでしょう。
ここからは個人再生が認められないケースについて解説します。
借金が減額されても返済の目処がたたない場合
個人再生をしても返済が現実的に不可能な場合、裁判所から認められない可能性があります。
減額後、原則3年以内、最大でも5年以内に全ての債務を弁済しなければなりません。
そのため、裁判所は債務者の収入、家族構成、ライフスタイルなどを踏まえて総合的に返済の可能性を判断します。
多額の資産がある場合や借金の総額が100万円以下の場合
高額な資産を所有していると個人再生の手続きが認められにくい場合があります。
個人再生は資産を残しながら債務を整理することが可能ですが、弁済額を決める際は資産価値が基準の一つとなります。
所有する資産の価値が高いと最低弁済額が引き上げられる可能性があり、例えば借金が300万円に減額されたとしても、資産価値が高ければ最低弁済額が500万円になることもありえます。
なかには支払い能力があると判断され、個人再生が認められない場合もあるでしょう。
また、個人再生では最低弁済額が100万円と定められているため、借金の総額が100万円以下の場合は利用できません。
このような場合は、他の債務整理方法を検討する必要があります。
特定の債権者にのみ返済を行っていた場合
個人再生の手続き中、特定の債権者だけに返済することは認められません。
これは偏頗弁済(へんぱべんさい)と呼ばれ、禁止されています。
個人再生では、全ての債権者へ公平に返済する義務があるためです。
特に、司法書士法人や弁護士から受任通知が送られた後に返済を行うと、個人再生が認められなくなるだけでなく裁判所から支払い能力があると判断され、最低弁済額が上がる可能性もあります。
ただし、住宅ローンや社会保険、税金の支払いは偏頗弁済には該当しないため、手続き中でも優先して支払うことは問題ありません。
個人再生のメリット4選
個人再生のメリットを4つご紹介します。
他の債務整理にはない利点がありますので、それぞれ詳しく紹介します。ぜひ参考にしてください。
借金を1/5・1/10にできる
借金の総額によって、最低弁済額が変わります。最低弁済額は以下のとおりです。
100万円未満 | 全額 |
100〜500万円未満 | 100万円 |
500〜1,500万円未満 | 残債務額の1/5 |
1,500〜3,000万円未満 | 500万円 |
3,000〜5,000万円未満 | 残債務額の1/10 |
たとえば、最低弁済額が300万円で返済期間が3年の場合、毎月の返済額は約8万4,000円です。
なお、この金額に住宅ローンや税金などは含まれません。
車や家を残せる可能性がある
個人再生を行っても、自分が所有している車や住宅を手放さずに済む場合があります。
特に、住宅は以下の条件を満たしていれば手放さずに済む可能性があります。
- 債務者本人名義の住宅であること
- 居住用として使用されており、床面積の半分以上が居住スペースであること
- 申し立て時点で本人がその住宅に住んでいること
さらに、住宅ローン特則という制度を利用すれば、個人再生の手続き中でも住宅ローンを支払いながら住み続けることができます。
一方、車の場合は注意が必要です。ローンの支払いが終わっていない場合、車の所有権はローン会社にあるため引き上げられる可能性があります。
つまり、車を保有し続けるにはローンを完済していることが条件となります。
債権者からの督促や強制執行が止まる
司法書士や弁護士に個人再生手続きを依頼して債権者へ受任通知を送ると、以降は債権者からの督促や強制執行が止まります。
これは貸金業法21条1項9号で、債務者が委託した代理人から通知を受けた場合、債権者は正当な理由なく債務者へ直接連絡してはいけないと定められているからです。
ただし、申し立て前に訴訟提起されている場合などは強制執行を受ける可能性があるため注意が必要です。
職業や資格に関係なく利用できる
個人再生の場合、職業や資格による制限はありません。
破産手続きとは異なり、公務員や士業など特定の職業に就いている人でも申し立てることができます。また、会社員が個人再生を行った場合もそれを理由に解雇されることは法律上認められていません。
債務額が大きく、資格や職業を維持したまま債務整理したいという方は、個人再生が適した選択肢となるでしょう。
個人再生のデメリット3選
個人再生のデメリットを3つご紹介します。
借金を大きく減らせるメリットがある一方、債務者にとって避けたいリスクも存在します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
信用情報が傷つき、新規の借入ができなくなる
個人再生を行うと、信用情報機関にその履歴が5〜10年間ほど記録されます。
この期間中、クレジットカードの新規作成や新たな借入を行うことは難しくなります。
さらに、車や住宅ローンの申し込みも制限されます。
クレジットカードの利用や新たな借入を検討している場合は、個人再生の手続きを控えたほうが良いでしょう。
家族や勤務先の人に知られる可能性がある
個人再生を行うと、家族や職場の人に知られる可能性があります。
その理由は、国が発行する「官報」という機関紙に、債務者の名前や住所が掲載されるからです。
官報には、以下のタイミングで計3回掲載されます。
- 裁判所が個人再生の手続きを始めたとき
- 再生計画案を裁判所が決議したとき
- 個人再生計画が裁判所に認可されたとき
士業や金融業者、警備員などは職業上定期的に官報を見ることがあります。
個人再生は、原則、家族や職場に知られることなく進められる手続きですが、周りにこれらの職業に就いている人がいる場合などは官報を通じて知られる可能性があるので注意しましょう。
手続きに労力とコストがかかる
個人再生の手続きは煩雑で、一般の方には難しいかもしれません。そのため、司法書士や弁護士に依頼する方も多く、その分費用がかかります。
申し立ての準備には以下の書類が必要です。参考程度にご確認ください。
- 申立書
- 陳述書
- 財産目録
- 債権者一覧表
- 住民票のコピー
- 給与明細書、源泉徴収票
- 財産の価格証明書
- 預貯金通帳のコピー
資産状況や雇用形態によっては追加書類が求められる場合があります。
自力で手続きを進めるにはかなりの労力が必要となるため、司法書士や弁護士に相談しサポートを受けることが賢明です。
個人再生の手続きの流れ
手続きの流れは以下のとおりです。
- 弁護士・司法書士に依頼する
- 裁判所へ申し立てを行う
- 個人再生手続が開始される
- 債権者が債権額を届け出す
- 再生計画案を作成・提出する
- 再生計画案が決議・認可される
- 返済開始・完済する
手続きが煩雑なため、申し立てするまでの間は依頼した司法書士や弁護士との打ち合わせを何度も重ねる必要があるかもしれません(※)。
申し立てから認可が下りるまでは通常半年〜1年かかることが予想されます。
※司法書士に個人再生を依頼する場合は、書類作成のみとなります
借金の返済に悩んでいる人は、丹誠司法書士法人へご相談ください
資産を手放さずに返済の負担を軽くしたい方は、任意整理や個人再生を検討することが一般的です。
個人再生であれば、借金を80〜90%程度減額できるかもしれません。
減額幅は、債務者の借金総額や収入、保有資産、貯金状況によって異なります。
それ以前に、債務整理の方法はどれが適切か、個々の状況によりけりです。
借金の返済に悩んでいる人は、丹誠司法書士法人にご相談ください。皆様へ適切な方法をご提案いたします。
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