任意整理は、借金問題の有効な解決手段です。しかし、デメリットを心配して、なかなか一歩踏み出せない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、任意整理のデメリットについて詳しく解説します。借金問題を抱えている方や、任意整理をすべきかどうかを迷われている方はぜひ参考にしてみてください。
✓任意整理のデメリットに対処する方法
✓任意整理をするうえでの注意点
✓任意整理に向いている人、向いていない人
任意整理のデメリットと対処法
任意整理とは、借金返済が困難になった人が、債権者(消費者金融・クレジットカード会社など)と交渉し、利息をカットしたり、返済期間を延ばしたりして、返済計画を見直す債務整理の1つです。
ありがたい制度ですが、デメリットがないわけではありません。考えられるのは次の6つです。
- 信用情報機関への登録
- 連帯保証人が借金を肩代わりする
- 支払いが完了していないモノが回収される可能性
- 借入や分割払いができなくなる可能性
- 賃貸契約や更新ができなくなる可能性
- 銀行口座が一時凍結する可能性
それぞれ、対処法があるため詳しく見ていきましょう。
1.信用情報機関への登録
任意整理をすると、一般的に信用情報機関に事故情報が登録され、巷で言われている「ブラックリスト(※)」に載ります。
登録されると、クレジットカードを新規に発行できなくなったり、車や家を購入するためのローンを組めなくなったりするデメリットがあります。
※ブラックリストは広く認知されている言葉ですが、実際にそのようなリストは存在しません
信用情報機関の信用回復を図る
信用情報機関とは、個人の収入や住所、ローンやクレジットカードの利用情報などを管理している機関です。借金やクレジットカードの支払いを長期間滞納したり、債務整理したりすると、その情報は事故記録として信用情報機関に登録されます。
金融機関や貸金業者は、ローンやクレジットカードの審査時に信用情報機関に登録された情報を参照しなくてはなりません。信用情報機関に事故情報が登録されると、返済能力に問題があるとみなされ金融審査に通らなくなります。
ただし、事故情報は永久に保存されるわけではなく、一定期間が経過すると削除されます。
信用情報は、3つの信用情報機関で登録・管理されています。任意整理の場合は借金を完済してから約5年間、日本信用情報機構(JICC)に登録されます。
任意整理をする際、滞納していたり代位弁済を受けていたりするケースがほとんどのため、基本的にいずれの機関にも登録されます。
任意整理は、3年から5年かけて元金を返済していくことになります。この間、遅れず確実に返済し、信用情報機関からの信用回復を図るよう心掛けましょう。
2.連帯保証人が借金を肩代わりする
連帯保証人付きの借金を任意整理した場合、連帯保証人に返済の義務が移ります。そのため、任意整理後は借金をした人への請求はストップし、連帯保証人が借金を負うことになります。
ただし、一般の借り入れは連帯保証人をつけていない契約がほとんどです。
クレジットカードやキャッシング等の契約において、連帯保証人が必要なケースはほとんどありません。連帯保証人が必要なケースは、大口の銀行借入や奨学金などです。
任意整理の場合、手続きを行う貸金業者を選べます。複数の借金がある場合、連帯保証人のついていない借金のみを任意整理すれば、連帯保証人への影響は一切ありません。
金融機関によっては、借入に対する保証会社が設定されているケースがあります。後から、連帯保証人付きの借入の会社と関連性があったことが発覚するなど、しっかり調査しなければ連帯保証人に対して金融事故を引き起こす可能性があります。
3.支払いが完了していないモノが回収される可能性
任意整理をすると、所有する住宅や車などの財産が回収されてしまうのではないか、と心配されている方は多いのではないでしょうか。
返済中のローンは任意整理の対象から外す
任意整理はあくまでも、債権者と交渉して利息をカットしてもらったり、返済スケジュールの変更に応じてもらう方法です。債務者が所有する財産を換価処分して、債権者に配当する訳ではありません。
住宅や車のローンが返済中の場合でも、任意整理の対象から外しておけば、取り上げられることはありません。
ただし、任意整理の対象にした場合は、債権者によって所有権、抵当権が行使される可能性があります。
抵当権が行使されると、担保にしていた不動産が競売にかけられ、その売却代金が返済に充てられます。
カーローンを組んでいる場合は、所有権留保のついている車は引き上げられます。
クレジットカードやショッピングローンで購入した高額家電の支払いが完了する前に任意整理をおこなってしまうと、高額家電は回収されてしまう可能性があります。
任意整理の対象から外した借金については、きちんと返済を続けていればモノが回収されてしまう心配はありません。回収されるおそれがあるのは、代金支払い完了前の高額かつ現金換価出来る可能性があるモノだけです。
4.借入や分割払いができなくなる可能性
信用情報に金融事故履歴が載ってしまうと、住宅ローンや自動車ローン、キャッシングなどの新たな借り入れができなくなる可能性が高くなります。クレジットカードと同様に、ローン借り入れの審査では信用情報が確認されます。
デビットカードやプリペイドカード、スマホ決済などを利用する
クレジットカードの場合は後日、代金が銀行口座から引き落とされますが、デビットカードの場合はカード支払い時に銀行口座から引き落とされます。銀行口座の残額以上の金額を使用できないため、使いすぎを抑えられます。
プリペイドカードは、あらかじめお金をチャージしておくことで、金額分の商品やサービスを購入できるカードです。任意整理前からクレジットカードと連携している場合は、連携先をあらかじめ変更しておくようにしましょう。
家族ローンを利用する
任意整理をすると、本人名義のクレジットカードは使用できなくなります。
ただし、家族が契約したクレジットカードであれば、利用できることが多いです。
家族カードを使用する場合は、クレジットカードを所有する家族が支払いをおこなうため、ほとんどの場合は問題ありません。
公的な貸付制度を利用できないか調べる
お金がなくて生活に困窮している人は、市役所で申し込める公的融資制度を利用すると、無利子または超低金利で国から借りられるため、検討してみるといいでしょう。資金の種類によって貸付条件が異なるため、詳細については市区町村の社会福祉協議会に問い合わせてみてください。
5.賃貸契約や更新ができなくなる可能性
任意整理が原因で、場合によっては賃貸借契約を更新できなくなってしまうこともあるため、対処法も含めて解説します。
UR賃貸や公営住宅、シェアハウスを検討する
新たに賃貸借契約を結ぶ場合、希望している物件の保証会社が信販系の場合は保証会社から保証契約を断られてしまい、入居できないことがあります。更新の際も信販系の保証会社を利用している場合、注意が必要です。
保証会社は契約更新のタイミングで信用情報機関へ照会をかけるため、事故情報が登録されていると更新に影響を及ぼすかもしれません。
任意整理後の賃貸契約のリスクは、UR賃貸や公営住宅、シェアハウスを検討することで回避できます。
連帯保証人を立てて交渉する
連帯保証人を立てて交渉するのも有効な方法です。賃貸保証会社を利用する代わりに連帯保証人をつけることができれば、任意整理の影響を受けません。連帯保証人は、借主が家賃を滞納した場合、借主に代わって家賃の支払い義務を負います。
貸主にとっては、賃貸保証会社と同様に、家賃の支払いを保証する存在です。一般的には、親族に連帯保証人を依頼することが多くありますが、収入面や信用情報面、年齢などの条件を満たしている必要があります。
6.銀行口座が一時凍結する可能性
銀行系のカードローンや消費者金融を利用している場合、消費者金融と提携している銀行も含め、該当の銀行口座すべてが凍結される可能性が高いため、任意整理前には以下のような対策が必要です。
対象口座引き落としの場合は、支払い方法を変更する
対象口座で引き落としを使用している場合、あらかじめ料金の支払い方法を変更しておくことで、凍結された場合にも引き出せないなどのリスクを回避できます。
任意整理の対象外の口座に残高を移す
凍結された場合のことを考えて、前もって残高を移動しておけば安心ですが、詳しくは司法書士や弁護士へ相談するのが一番です。
任意整理の注意点
任意整理はうまく利用すれば毎月の返済額を減らせたり、取り立てが止まったりとメリットもありますが、注意点もあります。
元金は減らない
任意整理では、原則として元金を減らすことはできません。カットできる可能性があるのは、今後発生する利息です。
借金の元金自体が高額で、任意整理をしても完済できる見込みがない場合は、「個人再生」や「自己破産」といった方法が効果的な場合もあります。
借金額・金利次第では効果を感じにくい
借金額が少なかったり、金利が低かったりするようなケースでは、任意整理による返済額の減額効果が感じられないケースもあります。
任意整理の依頼費用に見合った減額効果が望めない場合は、日々の節約を心掛けたり、アルバイトで収入を得るなどして完済を目指した方がいいでしょう。繰り上げ返済や一括返済で利息負担を減らすのも有効です。
任意整理に向いている人、向いていない人とは
任意整理は借金問題を解決するための有効な手段ですが、借金を抱えている全ての人におすすめできる方法ではありません。
任意整理に向いているのは、継続した収入があり借金の元本を3〜5年で返済できる人や、一部の貸金業者に対してのみ手続きを行いたい人です。毎月返済ができているのに利息がなかなか減らないといった人には、特に向いているといえます。
反対に向いていないのは、継続した収入がなかったり、収入に対する借金の金額が大きすぎる人です。任意整理は、手続き後に一定の金額を返済し続ける仕組みのため、借金の金額が返済可能な範囲をはるかに超えている場合は、向いていないといえます。
そもそも任意整理ができないケースとは
任意整理をするにあたってのさまざまな点について解説してきましたが、そもそも任意整理ができないケースも存在します。
安定した収入が無い
3~5年かけて毎月定額の金額を返済していくため、毎月の安定した収入は必須です。
この期間に元金の返済が完了できないのであれば、そもそも任意整理はできないといえます。
債権者が和解に応じない
任意整理はあくまでも債権者との交渉によって進められるため、和解交渉に応じてもらえなければ任意整理はできません。
近年、詐欺被害が増加している影響もあり、借り入れから間もなく経済難を理由に返済不能になる人が増えています。
金融機関が和解交渉に応じないことを理由に、任意整理ができないケースが多くなってきています。
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借金問題が長引いてしまうと、ストレスがかかるだけでなく、周囲の人に対しても悪影響を与えかねません。任意整理をうまく活用すれば借金問題を解決する有効な手段となりますが、デメリットもあるため、慎重に進めていくことが重要です。
任意整理を進めるならば、知識をもった司法書士や弁護士への依頼がおすすめです。どのような事務所へ相談すべきかお悩みの方は、ぜひ丹誠司法書士法人の無料相談をご検討ください。
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