念願だった豊胸をするための費用が確保できたので良いクリニックを探しているけれど、もし失敗したら返金対応をしてもらえるかわからず不安な人はいませんか?
この記事では、豊胸に失敗した際の対応方法から美容医療の相談窓口まで詳しく解説します。
✓美容医療のトラブル相談が多い理由は、制度と指導・監督する環境にある
✓豊胸をやめようと思ったときの対応
✓豊胸後に「失敗だ」と感じたときの対応
✓豊胸を後悔しないための対策
✓豊胸含む、美容医療トラブルの相談先
美容医療トラブルの相談の現状
引用元:厚生労働省「美容医療に関する現状について」
2024年6月27日に厚生労働省の第1回「美容医療の適切な実施に関する検討会」が開催され、「美容医療に関する現状について」という資料が配布されました。
資料内で、医療サービスや豊胸も含む美容医療に関連する相談件数の推移が、上記のグラフで示されました。2018年の調査開始からすると、2023年には約3.16倍に増加しているのがわかります。
引用元:厚生労働省「美容医療に関する現状について」
また2023年に美容医療に関連する相談内容で「返金」に関するものは2,155件で、すべての相談内容の中で2番目に多い件数だったのです。このことから、美容医療に関するトラブルに合わないようにするためには、消費者にも慎重な行動が求められると言えるでしょう。
美容医療のトラブル相談が多い理由
美容医療のトラブル相談は、なぜ増加してきているのでしょうか。「美容医療に関する現状について」を基に2つの観点からご紹介します。
制度の状況
美容医療に対する法律や法令の適用については以下のようになっています。
法律 | 法令 | |
適用される |
|
|
適用されない |
美容医療は健康保険法が適用されない自由診療なので、治療費は患者が全額負担しなければなりません。
治療費に保険が適用されない分、美容医療に対する期待値が上がるためトラブル相談が増加しやすい環境になっていると言えるでしょう。
指導や監督の状況
美容医療に対する指導や監督の状況は次のようになっています。
項目 | 概要 |
対象となる |
|
対象とならない |
|
美容医療は、保健所による指導・監督の対象ではあるものの、行き届かない面があるのが現状です。多様な医療行為に対して医事関係法令がどのように適用されるのかが明確でなかったり、法令を守っているかどうかを判断する証拠が少なかったりするためと考えられます。
このことから、本来保健所による指導や監督が必要な行為をクリニックがしていた場合、トラブル相談につながる可能性が出てくるでしょう。
豊胸をやめた方がいいと感じたら?
手術をする前に豊胸をやめた方がいいと感じたらどのように対処すればよいのでしょうか。2つご紹介します。
手術をキャンセルする
豊胸をやめると決めたら、クリニックのキャンセルポリシーに基づいて手術をキャンセルしましょう。キャンセルポリシーとは予約の取り消しに関する規則や条件のことで、クリニックのホームページに内容が記載されている場合もあります。
クリニックによって異なりますが、キャンセルポリシーには以下のような内容が記載してあるでしょう。
- キャンセルする場合の連絡先
- 手術のキャンセルや日程変更のルール(回数制限、手術時間への遅刻の扱いなど)
- 手術のキャンセルや日程変更をした場合のキャンセル料
- 予約金を支払っていた場合の返金について
なぜ手術を受けないのにキャンセル料が発生するのか疑問に思うかもしれませんが、クリニックでは予約された手術に合わせてあらかじめ人員や使用する資材を確保しており、その分のコストがかかるのでキャンセル料が必要なのです。キャンセルポリシーの内容を確認し、速やかに手続きを行うのがおすすめです。
クーリングオフや中途解約ができるか確認する
豊胸手術をやめると決めたら、特定商取引法に基づくクーリングオフ(一度契約をした場合でも一定の期間内であれば無条件で契約を解除できる制度)や中途解約ができるか確認しましょう。もし豊胸手術の内容が特定商取引法第41条における特定継続的役務提供にあたれば、クーリングオフや中途解約が可能となるためです。
ただし豊胸手術が特定継続的役務提供にあたるかどうかは、手術の方法により異なり個別に確認が必要なので注意しましょう。クーリングオフや中途解約でクリニックとトラブルが発生した際は、法律の専門知識を持つ司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。
なお当事務所では、コンプレックスを利用した詐欺的行為の相談を受け付けております。以下のような美容医のトラブルにも対応しているため、合わせて参考にしてください。
脱毛エステや美容医療サービス、歯の矯正治療、オンラインレッスンについての情報をインターネットで検索すると、「○年間通い放題」「○年保証」「期間・回数無制限」「実質無料」などと書かれた広告を見かけることがあります。 お得に聞こえるうたい文句[…]
豊胸後失敗だと感じたら?
豊胸後の経過を見て失敗だと感じたらどのように対処すればよいのでしょうか。2つご紹介します。
契約内容を確認する
最初に豊胸手術についてどのような契約を結んでいるかを再度確認しましょう。クリニックによりキャンセルポリシーが異なるように、返金制度や保証制度の内容も異なるためです。返金してもらうためには手術が失敗だと証明する必要がありますが、手術前後の画像や医師の診断書など、客観的な証拠を揃えるのがなかなか難しいでしょう。
このことから、多くのクリニックでは返金はせず保証制度内で再手術をするという対応をしているため、保証制度でどのような再手術ができるのかも確認しておくのがおすすめです。
損害賠償請求を考える
豊胸が明らかに失敗であれば、民法第415条の「債務不履行責任」や民法第709条の「不法行為責任」に問える可能性があります。2024年7月現在、裁判所のホームページにある「裁判例検索」で「豊胸」と入力して検索すると裁判例が10件出てくるので、民法に基づき損害賠償請求をするとどうなるのか参考までに目を通しておくのもよいでしょう。
クリニックに請求可能な損害は次の通りです。
- 手術費用
- 慰謝料
- 手術の後遺症の治療費や通院のための交通費
- 弁護士費用
損害賠償請求を行うと決めたら、まずは法律の専門家である弁護士に相談しましょう。
豊胸してよかったと思うためにしておきたいこと
豊胸における消費者トラブルは、手術結果が予想と異なるのが原因で起こります。豊胸してよかったと思うためにあらかじめしておきたいことを3つご紹介します。
豊胸のリスクを知る
手術後に豊胸してよかったと思うためには、豊胸にはリスクもあると理解するのが重要です。2019年4月25日に一般社団法人日本形成外科学会 、一般社団法人日本美容外科学会(JSAPS) 、一般社団法人日本美容外科学会(JSAS) 、公益社団法人日本美容医療協会が非吸収性充填剤についての共同声明を発表しました。内容は、安全性が確認されるまでは豊胸手術で非吸収性充填剤を使用するべきではないというもので、予想以上に合併症が発生したことから共同声明の発表に至ったのです。
また公益社団法人日本美容医療協会の「今まで相談の多いご質問」のページには、全ての人工乳房はまれにもれや破損をする可能性があると明記してあります。豊胸手術をする際はこのようなリスクに関する情報にも目を通し、内容を十分に理解しておきましょう。
チェックリストで事前チェックをする
豊胸手術をする際は、厚生労働省のホームページにある事前チェックリストを使い、クリニックで説明を受け、理解したかを確認してみましょう。チェック項目は以下の4つです。
- 使用する薬などがどのようなものか、自分でも説明できるか
- 効果だけでなくリスクや副作用などについても知り、納得したか
- ほかの方法や選択肢の説明も受け、自分で選択したか
- その美容医療は「今すぐ」必要か
チェックしてみて4つすべてにチェックができないようなら、豊胸手術を受けるかどうかを考え直すのがおすすめです。
豊胸の事故情報に目を通す
消費者庁の「事故情報データバンク」のページでは、生命・身体被害に関する消費生活上の事故情報を公開しています。2024年7月現在、フリーワードの入力欄に「豊胸」と入れて検索をかけると、429件の検索結果が表示されます。詳細画面を見ると事故の内容や、事故にあった人がどのような対応を求めているかがわかるので、豊胸で起こりうる事故について具体的なイメージがわくでしょう。
事故の内容や、事故にあった人が求めている対応には次のようなものがあります。
項目 | 概要 |
事故の内容 |
|
求める対応 |
|
上記のことが自分に起こるリスクがあっても手術に踏み切りたいかどうかを考えるのが大切です。
美容医療の相談窓口
豊胸を含む美容医療についての相談窓口にはどのような所があるのでしょうか。3つご紹介します。
消費者ホットライン「188」
消費者ホットライン「188」は、誰もがアクセスしやすい相談窓口とするのを目的に開設され、電話をするとナビダイヤルサービスを経由して、日本全国にある身近な消費生活センターや消費生活相談窓口につながります。年末年始(12月29日〜1月3日)をのぞき原則毎日相談ができます。
スムーズに相談を受け付けるためにまず氏名、住所、電話番号、性別、年齢、職業を聞かれるので、答えてから相談をしましょう。もし消費者ホットライン「188」が話し中でつながらない場合、国民生活センターの「平日バックアップ相談」の電話番号がアナウンスされるのでこちらも利用してみてください。平日バックアップ相談の対応時間は土日祝日、年末年始を除く10時〜12時、13時〜16時です。
消費者ホットライン「188」は、豊胸手術について相談をしたいけれどどこに連絡してよいのかわからない場合におすすめです。
消費生活センター
美容医療についての相談は、各地の消費生活センターでも受け付けてもらえます。独立行政法人国民生活センターの「全国の消費生活センター等」のページには、都道府県別の消費生活センターの一覧が掲載されています。
自分が住んでいる都道府県をクリックすると都道府県の消費生活センター、市区町村の消費生活センターが一覧で表示されるため、相談したい先を選ぶと以下の情報が確認できるのです。
- 所在地
- 電話番号
- 受付時間(特記事項)
特記事項には年末年始や祝日の場合の対応、また「お願い」という項目に相談する際のルールが記載してあるので併せて目を通しましょう。
消費生活センターは、自分の住む地域で豊胸手術について相談したい場合におすすめです。
日本美容医療協会オンライン公開相談室
日本美容医療協会オンライン公開相談室は、美容に関する相談を掲示板に書く形で受け付け、医師がそれに回答してくれるサービスです。
相談の手順は次の通りです。
- オンライン公開相談室のページから入室する
- 相談したい身体の部位をカテゴリ別に選択できるので「胸」を選ぶ
- 質問するか他の人の投稿を見るかを選択
質問する前にまず情報収集をしたい人は他の人の投稿を見ると、他の患者が豊胸についてどのようなトラブルを抱えているかとその解決方法がわかります。また、医師ではなく法律の専門家に相談した方がよいケースもあります。その場合は、医師が法律家に話をするよう促してくれるので、安心して相談ができるでしょう。
ペンネームで気軽に相談ができ投稿後も内容を削除できるので、電話での相談にはまだ抵抗がある人におすすめです。
まとめ
豊胸を含む美容医療のトラブルは増加傾向にありますが、豊胸のリスクを知り事故情報などにも事前に目を通しておくことで、最大限防止できるでしょう。また返金、クーリングオフ、中途解約といった手続きの中でクリニックとトラブルが発生した場合は、法律の専門知識を持つ司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。この記事も参考にして、豊胸してよかったと思えるよう慎重に準備を進めてみてください。