借用書は、お金を貸していることの重要な証拠です。
しかし借用書の有無にかかわらず、借金は時効で消滅します。
本記事では、借金は何年で時効になるのか、時効がリセットされることはあるのかなどを解説します。
借用書を書いた借金に、時効があるのかなどでお困りの方は、ぜひご一読ください。
- 借用書の重要性と借金の消滅時効との関係
- 借金が時効で消滅するまでの期間、時効で消滅させる手続き
- 借金の消滅時効期間をリセットする方法
- 借金の消滅時効期間を一時延長する方法
以下の記事では、借用書がある場合に貸したお金を取り返す方法を解説します。
回収率を上げるポイントもお伝えしますので、ぜひご覧ください。
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借用書があっても借金は時効で消滅する?借用書と時効の関係
借用書とは、お金を借りた人がお金を貸した人に対して、返済を約束することを記載した書面です。
お金の貸し借りの契約を金銭消費貸借契約と言います。
借用書は、金銭消費貸借契約があったことを証明するための非常に重要な証拠となります。
しかし借用書があっても、借金は時効で消滅することがあります。
借金の消滅時効とは?
消滅時効とは、一定期間の経過によって権利が消滅するという法制度です。
借金も消滅時効の対象です。
したがって一定期間が経過すると、時効によって消滅します。
借用書があっても時効消滅する?
借用書は重要ですが、借金の証拠にすぎません。
借用書があるからと言って、借金が時効にならないわけではありません。
借用書があるかないかにかかわらず、借金は一定期間が経過すれば時効消滅します。
借金は何年で時効消滅するのか?借金の消滅時効期間
借金が何年で時効消滅するのかは、いつ借りたものかによって違いがあります。
2020年(令和2年)4月1日に、新しい民法が施行されたためです。
2020年(令和2年)3月31日以前の借金
2020年3月31日以前にお金を借りた場合、借金の消滅時効期間は、返済期限日から10年です。
返済期限日を決めていない場合は、借りた日から10年です。
ただし、貸金業者から借りた借金の場合は5年になります。
2020年(令和2年)4月1日以降の借金
2020年4月1日以降に借りた場合、借金の消滅時効期間は、以下の2つのうちのいずれか早い方です。
- 貸主が借金返済を請求できることを知った時から5年
- 借金の返済期限日から10年
借用書に返済期限日が決められている場合、消滅時効期間は返済期限日から5年となります。
借用書に返済期限日が決められていない場合、貸主はいつでも返済を請求できることになるので、消滅時効期間は借りた日から5年となります。
貸金業者から借りた借金の場合も、5年です。
借金の消滅時効にはどのような手続きが必要?消滅時効の援用の解説
借金の消滅時効は、期間が経過すれば自動的に発生するわけではありません。
借金を時効消滅させるためには、消滅時効の援用をする必要があります。
消滅時効の援用とは?
消滅時効の援用とは、借主が貸主に対して消滅時効を主張する意思表示をすることです。
援用してはじめて、消滅時効の効果が発生します。
消滅時効援用の手続き
消滅時効の援用に特別な手続きはありません。
消滅時効を援用することを、借主が貸主に通知するだけです。
ただし、援用したことを証拠として残しておけるように、書面で行うとよいでしょう。
配達証明付きの内容証明郵便で消滅時効援用通知書を郵送するのが、最も確実です。
借金の債務整理に利用する場合
貸金業者からの借金も時効によって消滅します。
すでに返済期限日から5年が経過している借金は、消滅時効援用によって債務整理できます。
この場合も、貸金業者宛てに消滅時効援用通知書を郵送して援用します。
消滅時効を援用すると詐欺罪になる?
詐欺罪に該当するのは、はじめから返すつもりがないのに借金をした場合です。
単に返済をせずに消滅時効を援用したからと言って、詐欺罪に問われることはないのが通常です。
消滅時効援用の注意点
消滅時効を援用する前に、時効期間が経過しているか、時効更新がされていないかなどをよく確認しておかなければいけません。
時効でもないのに援用通知を送ってしまうと、トラブルになりかねません。
もっとも、時効期間や時効更新の有無を確認するには、知識や経験も必要です。
確実に消滅時効援用をするなら、司法書士に依頼した方がよいでしょう。
当事務所でも時効援用のご依頼を受け付けていますので、お困りの場合はご相談ください
借金の時効をリセットする方法はある?時効の更新の解説
借金の消滅時効期間は、これをリセットさせる方法があります。
この方法を時効の更新と言います。
例えば、5年の期間の借金があと1年で時効が完成するというときに時効を更新すると、時効期間がリセットされて、再度5年経過しないと時効は完成しないことになります。
貸主が訴訟を起こして判決が確定した場合(裁判上の請求)
貸主が借金返済を求めて訴訟を提起し、判決が確定すると、時効期間がリセットされます。
時効が更新されると、それまで進行していた時効期間はゼロになり、最初から時効期間が開始されることになります。
貸主が差押えなど強制執行をした場合
貸主が、判決などに基づいて、借主の財産を差し押さえるなど裁判所の強制執行手続きをした場合も、時効が更新されます。
借主が借金債務を承認した場合(債務の承認)
借主が、借金の猶予を提案したり、借金の一部を支払ったりした場合、借金があることを承認したことになります。
借金を承認すると、時効が更新され、時効期間がリセットされます。
時効が更新された後の時効期間
時効が更新されると、時効期間はリセットされ、またゼロから時効期間が開始されます。
更新後の時効期間は、時効期間5年の借金ならば再び5年となるのが原則です。
ただし、裁判上の請求をして判決が確定した場合は、更新後の時効期間は、一律10年となります。
貸主は、時効更新のことも考えておく必要があります
借金の時効完成が迫っている場合に期間を一時延長する方法はある?時効の完成猶予の解説
もうすぐ消滅時効が完成してしまう場合に、時効期間を一時的に延長する方法があります。
これを時効の完成猶予と言います。
ただし、時効の完成猶予を何回も繰り返せるわけではありません。
あくまで一時的な延長に過ぎません。
したがって、時効の完成猶予をしている間に、時効更新の手続きを進めることになります。
裁判外で貸主が借金返済を請求した場合(催告)
時効を更新するには、訴訟など裁判で借金返済を請求する必要があります。
裁判外で貸主が借金返済を請求(催告)しても、時効更新にはなりません。
しかし、裁判外での請求でも、時効期間を一時的に6か月だけ延長することができます。
この裁判外での催告は、証拠として残しておけるように、配達証明付きの内容証明郵便で請求書を郵送した方がよいでしょう。
貸主と借主との間で協議を行う合意書を作成した場合
貸主と借主との間で、借金について協議するという内容の合意書を作成した場合、その合意書に定められた協議期間内(最長1年未満)は、時効期間が進行しません。
この合意は、期間内に再度合意することもできます。
最長5年まで、時効期間を延長できます。
なお、期間を定めていなかった場合は、合意書の作成から1年間は時効期間が延長されます。
貸主が仮差押えなど保全手続をした場合
強制執行をするために相手方の財産を確保しておく仮差押えの手続きのことを保全手続といいます。
時効更新するためには強制執行が必要です。
仮差押えなど保全手続では、時効更新にはなりません。
しかし、仮差押えなど保全手続でも、6か月間は時効期間が延長されます。
借金を裁判上で請求する5つの方法
借金の時効を更新するためには、裁判上の請求をすることが確実です。
以下では、裁判上の請求をするための手続きについて解説します。
支払督促
貸主が裁判所に支払督促を申し立てると、裁判所から借主に対して督促状が送達されます。
督促状を受け取った借主が支払督促に異議を申し立てると、通常訴訟に移行します。
異議を申し立てなかった場合は、支払督促が確定し、財産差押えなどの強制執行ができるようになります。
支払督促をしただけでは時効は更新しませんが、確定した支払督促に基づいて強制執行をすれば、時効が更新されて、時効期間はリセットされます。
なお、支払督促の手続中は時効完成猶予となり、時効期間は進行しません。
民事調停
民事調停は、裁判所の選任した民事調停委員が間に入って、貸主と借主が話し合いをする手続きです。
民事調停で話がまとまり、裁判所によって話し合いの結果をまとめた調停調書が作成されると時効が更新され、時効期間はリセットされます。
なお、民事調停の手続中は、時効完成猶予となり、時効期間は進行しません。
少額訴訟
少額訴訟は、借金が60万円以下の場合に利用できる簡易的な訴訟手続きです。
少額訴訟の場合も、借主が異議を申し立てると、通常訴訟に移行します。
異議を申し立てなかった場合は判決が確定し時効が更新されて、時効期間はリセットされます。
なお少額訴訟の手続中は、時効完成猶予となり時効期間は進行しません。
通常訴訟
通常訴訟とは、一般的な民事訴訟のことです。
通常訴訟において判決となります。
その判決が確定すると、時効が更新されて、時効期間はリセットされます。
通常訴訟の手続中は、時効完成猶予となり時効期間は進行しません。
強制執行
確定した支払督促や判決または民事調停調書などがある場合、貸主は、借主の財産に対して差押などの強制執行を裁判所に申し立てることができます。
強制執行手続きが行われた場合も、時効が更新されて、時効期間はリセットされます。
どれにすればよいか迷っている方は、当事務所にご相談ください
借用書の作成ガイド
借用書があってもなくても、借金は時効によって消滅しますが、借用書が重要な証拠であることに違いはありません。
借用書は個人で作成しても証拠としての効力があります。
借用書には、最低限、以下の事項は書いておきましょう。
- 貸主が借主に対して金銭を交付したこと
- 交付した金銭の金額
- 契約年月日
- 借主が貸主に対して返済を約束したこと
- 返済の方法(現金払いか銀行振込かなど)
- 銀行振込の場合は、その振込先の銀行口座
- 返済期限日
- 利息を付ける場合は、利率の割合
- 返済が遅れた場合の措置(遅延損害金を付けるかなど)
公正証書で作成すると滞納後すぐに強制執行できるので、より効果的です。
まとめ
借用書を作成しておくことは重要ですが、借用書の存在が借金の消滅時効に影響することはありません。
借用書がある場合でも時効で消滅する前に、借金を返済してもらう必要があります。
丹誠司法書士法人では、認定司法書士が借金回収のアドバイスやサポートも行っています。
ご相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。