契約の解除を申し出たものの「クーリングオフはできない」と言われ、困っていませんか。
本来はクーリングオフが適用されるにもかかわらず「できない」と嘘をつかれたり、「違約金が発生します」などと脅されたりした場合は、期限を過ぎていてもクーリングオフが可能です。
したがって、クーリングオフできないと言われても泣き寝入りする必要はありません。
本記事では、クーリングオフが適用されるかどうかの判断基準を解説するとともに、「クーリングオフできない」と言われたときの対処法を紹介します。
- クーリングオフとはなにか
- クーリングオフが適用される取引と期間
- クーリングオフが適用されない6つのケース
- クーリングオフの期限を過ぎていても契約解除できるケース
- クーリングオフできないと言われたときの対処法と相談先
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クーリングオフとは
クーリングオフとは、申し込みや契約をした後でも、一定期間内に販売者に通知すれば無条件で申し込みの撤回や契約の解除ができる制度です。
たとえば訪問販売や電話勧誘販売、連鎖販売取引(マルチ商法)など仕組みが複雑な取引では、消費者は自分の考えが定まらないまま契約してしまうことがあります。
このように、消費者にとって冷静な判断が難しい取引において、契約後に頭を冷やして契約内容や必要性について考え直す期間を与えることがクーリングオフ制度の目的です。
クーリングオフが適用されると支払い義務がなくなり、すでに支払った代金は商品と引き換えに全額返還されます。
また、商品の引き取りにかかる費用は販売業者の負担になります。
なお、工事などの場合は施工済みであっても消費者が費用を負担する必要はなく、加工された所は事業者負担でもとの状態に戻されます。
クーリングオフが適用される取引と期間
特定商取引法において、クーリングオフが適用される取引と期間は上記のとおり定められています。
クーリングオフが適用されるのは、上記のように突然の訪問や電話などで事業者側から不意打ちで勧誘され、契約した場合に限られます。
自らの意思で店舗や営業所に出向いて契約した場合、原則としてクーリングオフできませんが、特定継続的役務提供・連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引においては、店舗や営業所で契約した場合でもクーリングオフが可能です。
クーリングオフ期間は、申込書面または契約書面を受け取った日のうち、早いほうから起算します。
クーリングオフ通知の手順
クーリングオフする場合は、上記の期間内に販売業者に対して申し込みの撤回や契約の解除の通知を行いましょう。
書面やFAXのほか、電磁的記録による通知も可能です。
契約書面をチェックしたうえで、適切な通知方法を判断しましょう。
クレジット契約の場合は、販売業者だけでなくクレジット会社にもクーリングオフ通知を行う必要があります。
なお、クーリングオフは、消費者が書面を発送(または電磁的記録を送信)した時点で効果が発生します。
クーリングオフ期間内に通知を発送・発信していれば、通知が販売業者に届いた日が期間経過後であっても、クーリングオフは有効です。
クーリングオフが適用されない6つのケース
クーリングオフには条件があり、契約内容や期間によっては適用されないケースもあります。
クーリングオフが適用されないケースは、主に下記の6つです。
- 通信販売で購入した
- クーリングオフできる期間を過ぎている
- 対象外の商品・サービス(自動車・葬儀など)を購入した
- 3,000円未満の商品・サービスを現金で購入した
- 営業・仕事用で契約した
- 化粧品や健康食品などの消耗品を使用した
以下でそれぞれ詳しく解説します。
1.通信販売で購入した
通信販売で商品やサービスを購入した場合は、クーリングオフが適用されません。
通信販売では、消費者が自ら購入の申し込みを行うため、クーリングオフ制度による再考期間を設ける必要がないと考えられているためです。
販売業者が返品の可否や条件に関する特約を設けている場合は、そのルールに従う必要があります。
ただし、画面やカタログに返品制度に関する記載がなければ、特定商取引法の規定が適用され、商品を受け取った日を含めて8日以内であれば返品可能になります。
この場合の返品費用は消費者が負担します。
通信販売で購入する際は返品に関する条件をよく確認し、商品を受け取ったらすぐに中身を確認しましょう。
2.クーリングオフできる期間を過ぎている
クーリングオフには期限が定められています。
訪問販売や特定継続的役務提供、訪問購入の場合は8日間、連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引の場合は20日間を過ぎるとクーリングオフできないため、注意が必要です。
ただし、販売業者に「クーリングオフはできない」と妨害された場合や、契約の解除に関して嘘の内容を伝えられた場合など、期限を過ぎていてもクーリングオフできる場合があります。
詳しくは、本記事の「クーリングオフを妨害されたら?期限を過ぎていても契約解除できるケース」の項目で解説しています。
3.対象外の商品・サービス(自動車・葬儀など)を購入した
自動車・自動車リース・葬儀はクーリングオフの対象外です。
自動車や自動車リースは高額な取引であり、契約までにじっくり検討する時間があると判断されるため、クーリングオフは適用されません。
新車だけでなく、中古車や新古車を購入する場合も同様です。
また、迅速な手配が求められる葬儀などもクーリングオフの対象外です。
4.3,000円未満の商品・サービスを現金で購入した
訪問販売や電話勧誘販売において、総額3,000円未満の現金取引を行った場合、クーリングオフできません。
ただし、商品の引き渡しや代金支払いの一部を後日行う場合はクーリングオフ可能です。
訪問買い取りも、金額にかかわらずクーリングオフできます。
5.営業・仕事用で契約した
クーリングオフ制度は消費者の保護を目的としているため、仕事や営業活動の一環として商品やサービスを購入した場合、クーリングオフが適用されません。
ただし、契約状況によってはクーリングオフ以外の方法で契約を解除できる可能性もあります。
たとえば無料求人広告詐欺(※)などは事業者間で契約が締結されることが多く、クーリングオフの対象外になります。
しかし、販売業者が故意に重要事項を隠していた、サービス内容が契約時の説明と異なるなど事業者の不当な行為により契約した場合は、クーリングオフ以外の法律によって契約を解除できる可能性があります。
※無料求人広告詐欺とは、「求人サイトに無料で広告を掲載しませんか?」などと勧誘しながら、無料掲載期間経過後に自動で有料掲載に移行し、多額の広告料を請求される詐欺的行為のことを指します。
6.化粧品や健康食品などの消耗品を使用した
化粧品や健康食品などの政令指定消耗品を使用した場合、クーリングオフできません。
<クーリングオフできない政令指定消耗品>
- 化粧品・毛髪用剤・石けん(医薬品を除く)
- 浴用剤・合成洗剤・洗浄剤・つや出し剤・ワックス・靴クリーム・歯ブラシ
- 健康食品(医薬品を除く)
- 不織布・織物(幅13cm以上)
- 生理用品・コンドーム
- 防虫剤・殺虫剤・防臭剤・脱臭剤(医薬品を除く)
- 履物
- 壁紙
- 配置薬
ただし、販売業者が商品を開封した場合や、商品の開封を勧められた場合はクーリングオフが認められます。
また、書面に「商品を使用するとクーリングオフできなくなる」という記載がない場合や、マルチ商法による契約の場合もクーリングオフできます。
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クーリングオフを妨害されたら?期限を過ぎていても契約解除できるケース
悪徳な販売業者は、あの手この手でクーリングオフを妨害してくることがあります。
下記のような場合はクーリングオフの期限を過ぎていても契約解除できる可能性があるため、諦める必要はありません。
- クーリングオフが適用されるのに「できない」と販売業者に言われた
- 販売業者に脅されてクーリングオフできなかった
- 商品について虚偽の説明を受けた
- 断っているのに販売業者が帰らず、仕方なく契約した
- 契約書面にクーリングオフについての記載がなかった
- 契約書面自体を受け取っていない
それぞれ詳しく解説します。
クーリングオフが適用されるのに「できない」と販売業者に言われた
本来はクーリングオフが適用される取引にもかかわらず「クーリングオフできません」と販売業者に言われた場合は、期限を過ぎていてもクーリングオフが可能です。
「一度使用した商品はクーリングオフできない」「当社ではクーリングオフを受け付けていない」などの理由をつけられるのがよくあるパターンです。
しかし、クーリングオフは法律で認められた制度であり、販売業者の都合で制限することはできません。
「契約書にクーリングオフできないと書いてある」などと言われることもありますが、法律でクーリングオフの対象となる取引であれば、その契約内容は無効です。
販売業者に脅されてクーリングオフできなかった
「クーリングオフすると違約金が発生する」などと販売業者に脅されてクーリングオフを断念した場合も、期間にかかわらずクーリングオフが可能です。
クーリングオフは消費者に対して無条件での申し込みの撤回・契約の解除を認めている制度のため、原則として損害賠償や違約金の支払義務は発生しません。
商品について虚偽の説明を受けた
クーリングオフが適用されなくても、ほかの救済手段によって契約を解除できる可能性があります。
たとえば商品やサービスの内容が契約当時の説明と違っていた場合は、民法に基づき販売事業者に責任を追及でき、契約解除や返金請求が可能です。
また、将来の不確実な事実に対して「絶対に」「確実に」などと断定的な言葉で勧誘され、その内容を信じて契約した場合も、消費者契約法に基づき取消しできるケースがあります。
断っているのに販売業者が帰らず、仕方なく契約した
クーリングオフ期間を過ぎていても、販売業者の強引な勧誘によって契約させられた場合は契約の取消ができる可能性があります。
- 「帰ってほしい」と言ったのに販売業者が帰らず、困惑して契約した
- 「帰りたい」と言ったのに帰してくれず、仕方なく契約した
上記のような場合、1年以内であれば契約の取り消しが可能です。
契約書面にクーリングオフについての記載がなかった
販売業者には、クーリングオフについて記載のある法律で定められた書面を交付する義務があります。
そのため、販売業者から受け取った契約書などにクーリングオフに関する記載がなかった場合、期限を過ぎていても契約を解除できます。
契約書面自体を受け取っていない
契約書にクーリングオフに関する記載がなかった場合と同様に、そもそも契約書自体を受け取っていない場合、クーリングオフの起算日が進行しません。
したがって、この場合はいつでもクーリングオフ(契約解除)が可能です。
クーリングオフ期間が過ぎていても諦めず、第三者に相談しましょう
クーリングオフできないと言われたときの対処法と相談先
クーリングオフを申し出ると「直接会って話しましょう」と呼び出され、考え直すよう説得されることもあります。
新たな契約をさせられる危険性もあるため、安易に誘いに乗らず、第三者に相談することが大切です。
ここでは、クーリングオフできないと言われたときの相談先を紹介します。
消費生活センター・警察に相談する
消費生活センター(電話番号:188)や警察の相談専用窓口(電話番号:#9110)では、クーリングオフ制度に関する無料相談が可能です(通話料は相談者負担)。
クーリングオフできるかどうか判断をしてもらえるほか、手続き方法についても説明してもらえます。
司法書士・弁護士に相談する
クーリングオフが適用されない場合でも、司法書士・弁護士に相談すればほかの方法で契約を解除できる可能性があります。
また、詐欺まがいの販売業者にお金を支払ってしまった場合でも、司法書士・弁護士に相談すれば法的手段を用いて返金されるケースがあります。
無料相談に対応している司法書士事務所・弁護士事務所もあるため、一人で抱え込まずにアドバイスを求めてみましょう。
まとめ
販売業者にクーリングオフを妨害された場合や強引に契約を迫られた場合、契約書面に不備があった場合などは、期限を過ぎていてもクーリングオフが可能です。
「クーリングオフできない」「違約金が発生する」などと言われても諦めず、公的機関や司法書士・弁護士に相談しましょう。
丹誠司法書士法人では、クーリングオフに関する無料相談を受け付けています。
消費者問題の解決の実績が豊富な認定司法書士が親身にサポートしますので、クーリングオフを妨害されてお困りの方、支払ったお金を取り戻したい方は、一度お話をお聞かせください。
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