インターネットが普及した現代において、サイバー犯罪はますます巧妙化し、私たちの生活を脅かしています。
近年、深刻な問題となっている「なりすまし」もその1つです。
なりすましとは、実在する個人や企業になりすます行為のことです。また、なりすまし行為によって、個人情報を不正に取得して金銭をだまし取る詐欺も横行しています。
巧妙に仕組まれた手口によって被害にあってしまうケースが後を絶たず、被害件数は増加傾向にあります。
本記事ではなりすましをテーマに、詐欺の手口を7つ解説していきます。
後半では、なりすまし行為を入り口とした詐欺被害にあってしまった際の相談先も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
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✓なりすましの7つの手口
✓なりすましの被害はなぜ広がるのか
✓なりすましの被害事例
✓なりすましの被害を防止する方法について
✓なりすましの被害にあった場合の相談先
そもそも「なりすまし」って何?
冒頭でも説明したように、なりすましとは実在する個人や企業になりすます行為のことです。
有名人になりすまして何らかの商品を宣伝する場合もあれば、誰もが知っている有名企業の公式アカウントにそっくりな「なりすましサイト」で個人情報を詐取するケースもあります。
他人のSNSアカウントを乗っ取り、周囲の人間にお金を要求するといった事例も発生しています。
個人だけでなく企業がターゲットになることも多く、深刻な問題を引き起こしています。
なりすましによって、不正に金銭や情報を詐取する行為を「なりすまし詐欺」と呼ぶこともあります。
「なりすまし」は、セキュリティ意識の向上や適切な対策によって防げるものです。
なりすまし行為が横行していると把握しておくだけでも、「このサイトは怪しい」などと疑念を抱くきっかけとなるはずです。
なりすましから始まる詐欺の手口7つ
なりすまし詐欺の手口は、実に多種多様です。
たとえば、大手企業を騙って偽のウェブサイトに誘導し、個人情報を盗み出す「なりすましフィッシング詐欺」や、有名人になりすまし、あたかも本物のように見せかけた広告で高額な商品を売りつける「なりすまし広告詐欺」などがあります。
ここでは、なりすまし詐欺の手口を7つに分けて解説します。
1.なりすましメール詐欺
なりすましメールとは、悪徳業者が信頼できる企業や個人になりすましてメールを送信し、個人情報や金銭をだまし取る詐欺です。
巧妙に偽装されているため、本物と見分けることが難しく、被害にあってしまう人が増えています。支払いに関する偽の請求書を送信し、個人情報を聞き出したり、不正な送金に誘導したりします。
たとえば、銀行やクレジットカード会社を装って、個人情報やパスワードの入力を求めるケースがあります。メールに記載されたリンクをクリックしたり、添付ファイルを開いたりすると、コンピューターがウイルスに感染する、不正なサイトに誘導されるといった危険性があります。
最近では、企業を狙った「ビジネスメール詐欺」も増えており、取引先を装って不正な送金を要求してくるケースも報告されています。
2.なりすましフィッシング詐欺
なりすましフィッシング詐欺とは、銀行やECサイトなど、よく知られた企業やサービスになりすまし、本物そっくりの偽のウェブサイトにユーザーを誘導して、IDやパスワードなどの個人情報を盗み出す詐欺的行為です。
なかには、検索エンジンで本物のウェブサイトに似た広告を表示して、クリックさせることもあります。SMSを使って短いメッセージを送り、緊急事態を装って個人情報の入力を促すという手口もあります。
被害にあうと、銀行口座から不正にお金を引き出されたり、個人情報が他のサービスで悪用されたりします。また、スマートフォンがウイルスに感染してしまうと、登録された電話帳の情報が盗まれたり、自分の端末がフィッシングSMSの発信源になってしまったりすることがあります。
3.なりすまし広告詐欺
なりすまし広告詐欺とは、有名人や有名企業になりすまして発信する、広告を利用した詐欺的手法です。このような広告をクリックすると偽のサイトに誘導され、個人情報を入力させられたり、高額な商品を売りつけられたりする危険性があります。
有名人の画像や企業ロゴを勝手に使用し、あたかもその人物や企業が推奨しているかのように見せかけたり、実施されていないキャンペーンや大幅な割引セールなどをうたい、購買意欲を煽ったりします。偽のサイトに誘導されると、クレジットカード情報や住所などの個人情報を不正に入手しようとしてきます。
また、なかには偽のサイトではなく、アプリを用いてこのような詐欺的行為を行うケースもあります。
偽のアプリをインストールしてしまった場合、スマートフォンが乗っ取られたり、高額な料金を請求されたりすることがあります。
4.アカウントなりすまし詐欺
アカウントなりすまし詐欺とは、SNSアカウントを悪意のある人が乗っ取り、あたかも本人が発信しているかのように見せかけ、周囲の人々に嘘の情報を流してお金をだまし取ろうとする詐欺的行為です。緊急事態を装ったり、投資話を持ちかけたりして、お金を振り込ませようとします。
アカウントのなりすまし行為自体は、金銭目的のみではなく、嫌がらせやストーキング、知名度を悪用したフォロワー稼ぎなどが目的で行われることもあります。
知り合いになりすまして個人情報を聞き出そうとしたり、不審なリンクをクリックさせようとするなど、評判を落とすような嘘の情報を広めてほかのユーザーをだますなどの場合も多いです。
5.オレオレ詐欺
オレオレ詐欺とは、親族や警察官、弁護士などを装い、親族が起こした事件・事故に対する「示談金」として金銭をだまし取る行為です。
よくあるパターンとしては、息子や娘、孫、祖父母など、被害者の身内を装い、電話をかけてきます。
そして「事故を起こしてしまった」「お金を貸してほしい」など緊急事態を装い、被害者を焦らせて現金を振り込ませたり、キャッシュカードをだまし取ろうとしたりします。
被害者をさらに混乱させるために、弁護士や警察官を名乗る人物が登場し、ストーリー仕立てにされることもあります。
6.クレジットカードの不正利用詐欺
クレジットカードの不正利用詐欺は、クレジットカード情報を不正に取得した第三者が、商品やサービスを購入したり、現金を引き出したりする詐欺的行為です。被害の発端として、気付かないうちにクレジットカード番号が盗まれたり、カードを偽造されたりするケースがあります。被害にあうと、不正に契約されたサービスの料金や商品の購入代金など、身に覚えのない請求が届いたりします。
不正利用の手口は大きく分けると、インターネット上での不正利用と、店舗での不正利用の2パターンがあります。また、クレジットカード情報が盗まれる手口は以下のとおりです。
- フィッシング:偽のウェブサイトに誘導し、カード情報を盗み出す
- スキミング:ATMや店舗のカードリーダーに不正装置を取り付け、情報を抜き取る
- 盗難:紛失したカードや盗んだカードを不正に入手し悪用する
- 情報漏洩:企業や組織の情報システムから、顧客のカード情報が流出する
7.土地所有者なりすまし詐欺
土地所有者なりすまし詐欺とは、地面師と呼ばれる人物が、本当の土地の所有者などになりすまして行う詐欺的行為です。
地面師は、その土地をあたかも自分のものであるかのように見せかけて、第三者に売却したり担保にしたりして、不正に金銭を得ます。
具体的には、偽造された書類を用いて土地の所有権を偽装したり、本物の所有者を装って買主と接触したりしてきます。不動産のプロであってもだまされてしまうことがあるほど、巧妙な手法を用いてきます。
なりすまし詐欺はなぜ横行するのか?
なりすまし詐欺の被害が増える理由は、大きく分けて2つあります。
手口が年々巧妙化しているから
SNSの普及によって、誰もが自分自身の情報を容易にインターネット上へ公開できるようになり、その結果、他者がそれを閲覧・収集できるようになりました。
加えて、音声合成技術を用いて有名人の声を真似た音声が生成できるようになるなど、AI技術の発展も目まぐるしい世の中になっています。他者の情報を簡単に得られるようになったこと、AI技術が発達したことを悪用して、より自然で信憑性の高いなりすましが可能になっていることも、なりすまし詐欺が横行するようになった要因の一つとして考えられます。
対策が不十分な人が多いから
なりすまし詐欺に対する知識や対策が不十分な人はまだまだ多く、被害者が増え続けています。とくに高齢者や経済的に不安を抱えている人は、不安や焦りをあおる言葉に引っかかりやすい傾向があります。
インターネットを普段利用しない高齢者や情報弱者が身近にいる方が、もしこれを読んでいたら、次項で紹介する防止策を共有したうえで、気にかけてあげてください。なりすまし詐欺の手口は年々巧妙になっているため、警戒心と正しい知識を持ち、被害にあわないようにしましょう。
なりすましの被害事例
なりすまし詐欺は、ターゲットとなる年齢層もバラバラです。
これは、なりすまし行為自体は「投資詐欺」や「出会い系詐欺」へとつながる「詐欺の入口」に過ぎないためです。
ここでは、詐欺業者がさまざまな人物になりすました事例を紹介します。
なりすましの被害事例1.有名デパートの公式SNS
これまでに、某有名デパートのSNSアカウントを装ったアカウントが多数発見されています。
偽アカウントから送信されたDM(ダイレクトメッセージ)には、URLが記載されているそうです。クリックすると、受信者の個人情報が、発信者に取得されてしまうおそれがあります。
場合によっては、犯罪などに悪用される可能性もあるため、絶対にクリックしないでください。
なりすましの被害事例2.政府関係者
なりすましの被害は、日本国内だけにとどまりません。
2022年にはFBIまでもが、政府関係者へのなりすましに関する注意喚起を行っています。
入国管理庁や人材開発省、警察庁の職員になりすまし、電話やSMSで、銀行口座の番号や暗証番号を聞き出す手口が横行しているようです。
また「現金を振り込ませる手口」もあり、海外だけでなく日本国内でも多くの被害が報告されています。
政府関係者が上記のような手段で、お金や個人情報を要求することは、決してありません。相手からどのような理由を述べられたとしても、鵜呑みにしないでください。
なりすましの被害事例3.著名な投資家
60代の女性は、以前から投資を考えていたそうです。
女性はある日、著名な経済評論家が主催する「投資相談のSNS広告」を見つけました。広告には「100万円が1億円になった」という体験談が書かれていました。
興味を抱いた女性は、メッセージアプリに登録してしまったそうです。
すると「評論家のアシスタント」を名乗る人物から、メッセージが届きました。内容は「儲かる投資話」でした。
「著名な評論家の言うことならば信用できる」と思った女性は、アシスタントに言われるがまま、100万円を振り込みます。
しかし利益を受け取る前に「さらに利益を増やすため」として、追加で100万円を振り込むように指示されます。
女性は最初に振り込んだ時とは別の口座に、追加で100万円振り込んでしまいました。
その後も似たようなやり取りが繰り返され、最終的には総額1,500万円を振り込んでしまいました。
アシスタントから提供されていた投資ツールで運用状況を確認すると、6千万円の利益が出ていたため、女性は利益を引き出そうとします。
しかし、手数料や税金などを含めて約2200万円を支払わないと、出金できないと告げられました。
なりすまし詐欺被害の防止策
なりすまし詐欺の被害を防ぐためには、以下の対策が重要です。
情報の信頼性を確認する
不審なメールや電話、ウェブサイトは、安易に信用せず、必ず内容を確認しましょう。とくに、個人情報を要求する内容には警戒してください。
ログインIDやパスワードを入力する際には、誘導されたサイトが本物かどうか確認しましょう。誘導先が精巧に作られた偽サイトかもしれません。
怪しいメールは反応しない・消す
身に覚えのないメールは、たとえ差出人が知人や企業であったとしても、安易に返信したり、添付ファイルを開いたりしないようにしましょう。
とくに、知らない人物からのメールは、文面やドメインの確認をおこない、不審な点がないかチェックしましょう。
なりすまし詐欺の被害にあった場合は?
万が一、なりすまし詐欺の被害にあってしまった場合は、まずは被害拡大を防ぐための手続きを進める必要があります。
もしクレジットカード情報の漏洩があったのなら、クレジットカード会社に連絡しましょう。
警察への相談も有効です。ただし、警察は犯人逮捕を目的に行動するため、返金交渉はしません。返金してもらいたい場合は、司法書士や弁護士への相談をおすすめします。
\すでにお金を払ってしまったら/
巧妙化する「なりすまし詐欺」の被害から身を守ろう
なりすまし詐欺は、私たちの身近で起こりうる犯罪です。誰もが被害にあう可能性はあります。
SNSやAI技術の進化・発展により、手口はますます巧妙化しています。「自分は大丈夫」と過信せず、万が一に備えましょう。
丹誠司法書士法人では、なりすまし詐欺に関する相談を受け付けています。無料相談を実施しているため、不安に感じている方はお気軽にお問い合わせください。