一見、特別であるかのように見える商品やサービスが、実際は期待外れだったためトラブルになるという話を聞くけれど、このような場合に返金はしてもらえるのか気になる人はいませんか?
この記事では、そのような人に知ってほしい優良誤認表示による返金措置について詳しく解説します。
✓優良誤認表示による返金措置とは
✓景品表示法改正による罰則の拡充
✓消費者庁長官が認定した事業者による返金措置
✓優良誤認表示と認められた事例
✓景品表示法で規制される、その他の表示
優良誤認表示とは
優良誤認表示は、景品表示法第5条の第1号で以下のように定義づけられています。
項目 | 概要 |
優良誤認表示をする人 | 事業者 |
優良誤認表示の被害にあう人 | 一般消費者 |
優良誤認表示の対象 | 取引する商品やサービスの品質や規格 |
優良誤認表示だとされるもの | 1.実際の商品やサービスより著しく優良だと示す 2.事実ではないのに競合他社の商品やサービスより著しく優良だと示す 1と2、いずれかの条件を満たし、不当に顧客へアピールして一般消費者の主体的で理にかなった判断の邪魔をする可能性がある表示 |
広告の表示に関連したトラブルには「コンプレックス広告」と呼ばれるものもあります。詳しくは以下の記事で解説しているため、合わせて参考にしてください。
「太ったから彼氏に振られた」 「ハゲは恋愛対象外と言われた」 インターネット上で、上記のようなインパクトのある文言を使った広告を目にしたことはありませんか。 外見のコンプレックスを強く刺激し、極端な表現で不安を煽る広告が横行し[…]
優良誤認表示による返金措置とは
優良誤認表示による返金措置については、景品表示法第10条と第11条に以下の内容が記載されています。
- 対象は商品やサービスを優良誤認表示した事業者
- 上記には「課徴金」の支払い義務が課されている
- 事業者が消費者に対し、自主的に返金措置を行った場合、課徴金が減額される
- このとき事業者は、内閣総理大臣に「実施予定返金措置計画」を作成して認定を受ける
- 減額される金額は、内閣府令で定めた規程に基づいて決められる
景品表示法で定められているのはあくまでも「国へ課徴金を支払うこと」であり、事業者から消費者への返金ではありません。しかし、結果的に返金することが課徴金を減らすことにつながるため、事業者が自ら進んで消費者へ返金する仕組みとなっています。
景品表示法改正による罰則の拡充
改正された景品表示法は2023年5月17日に公布され、2024年10月1日から施行されます。
この改正では優良誤認表示について新しく次の2つの事項が追加されました。
- 優良誤認表示・有利誤認表示に対し、直罰(100万円以下の罰金)の新設
- 確約手続きの導入
確約手続きとは、優良誤認表示の疑いのある表示を行った事業者が、その是正のための計画を自主的に作成・申請し内閣総理大臣の認定を受けると措置命令や課徴金納付命令が適用されなくなることです。
新しい事項は事業者の自主的な是正への取り組みや違反をさせないための罰則を強化し、一般消費者の保護を目的としています。
改正された景品表示法が施行されれば優良誤認表示に対する認識が高まり、商品やサービスの内容を適切に伝えようとする事業者も増えるのではないでしょうか。
優良誤認表示に関する返金措置
消費者庁の「認定された返金措置一覧」のページでは、返金措置を行った事業者を「実施中の返金措置」「終了した返金措置」の2種類にわけて公表しています。
具体的には以下の内容が公表されます。
- 対象商品・役務
- 実施事業者
- 返金実施期間
- 返金措置に関する問い合わせ先など
商品やサービスの詳細、問い合わせ先のリンクなども掲載されているため、一般消費者がこのページを見れば各事業者が返金措置をどのように行っているのかが、すぐにわかるようになっています。
購入した商品に対して「実際の効果や機能が広告の内容と違う」と感じている方は、上記のページから優良誤認表示による返金が行われているかどうかをチェックするとよいでしょう。
優良誤認表示と認められた事例
一般消費者と事業者双方に優良誤認表示についての認識を高めてもらうことを目的として、消費者庁のホームページでは「景品表示法における違反事例集」を公開しています。
一般消費者に誤認させる表示を行い、景品表示法への違反と認められた事例を5つご紹介します。
LED電球の明るさが「優良誤認表示」と判断された事例
引用元:消費者庁「景品表示法関係ガイドライン等|景品表示法における違反事例集」
店頭のPOPで電球の明るさを誤認させる表示を行った事例をご紹介します。
表示の詳細は以下の通りです。
項目 | 概要 |
対象商品やサービス | 一般照明用電球形LEDランプ |
表示媒体 | 店頭POP |
表示内容 | LEDランプが白熱電球の60W形と同じ明るさになるかのように誤認させる表示 |
実際の内容 | 使用する用途によっては白熱電球の60W形と同じ明るさにはならない |
表示では用途に応じて明るさが異なることが記載されていないので、一般消費者には上記のLED電球は白熱電球の60W形と同じ明るさだと思われてしまいます。
電球は色や形もニーズの1つではありますが、明るさを一番重要視して購入する人が多いため、必要な明るさを満たせず困る人も出てくるでしょう。
店頭POPは商品の魅力を一目で伝え、購買意欲を刺激する役割を持ちますが、POPだけを信用しすぎてはいけないとわかる事例です。
ひび割れ防止補強が「優良誤認表示」と判断された事例
引用元:消費者庁「景品表示法関係ガイドライン等|景品表示法における違反事例集」
パンフレットの説明で、分譲マンションのひび割れ防止用補強筋などの施工について優良誤認表示と判断された事例を紹介します。
項目 | 概要 |
対象商品やサービス | 分譲マンション |
表示媒体 | パンフレット |
表示内容 | 対象物件の全ての開口部の角に、ひび割れ防止用補強筋などが施工されているかのように示す表示 |
実際の内容 | ひび割れ防止用補強筋などが施工されていた開口部の割合は、各物件の25~60% |
パンフレットの説明には、ひび割れ防止補強筋などが具体的にどの部屋に施工されているかの記載がないため、一般消費者から見ると全ての開口部の角に施工されていると思われてしまうでしょう。
パンフレットは一般消費者にとって商品やサービスについて知るきっかけとなるものですが、よく内容について読み込み、わかりにくいことは確認が必要だとわかる事例です。
データ通信基地局の開設計画について「優良誤認表示」と判断された事例
引用元:消費者庁「景品表示法関係ガイドライン等|景品表示法における違反事例集」
鉄道車両に掲示した広告で、モバイルデータ通信サービスについて優良誤認表示と判断された事例を紹介します。
項目 | 概要 |
対象商品やサービス | モバイルデータ通信サービス |
表示媒体 | 鉄道広告 |
表示内容 | 下り最大通信速度が 75Mbpsとなる通信サービスの基地局を、2012年6月までに東名阪主要都市における人口カバー率が99%になるように、開設する計画があると誤認させる表示 |
実際の内容 | 表示した時点で上記の計画はなかった |
基地局の今後の開設計画のような企業の方針については、その企業の発信を信じるしかないため、これを優良誤認表示と見抜くのはなかなか難しいでしょう。
広告を入口として商品やサービスを購入する一般消費者は少なくありませんが、表示されたデータの数値が実現可能なものであるかどうかを、慎重に検討した方がよいかもしれません。
成分テストの実施機関が「優良誤認表示」と判断された事例
引用元:消費者庁「景品表示法関係ガイドライン等|景品表示法における違反事例集」
こちらはパンフレット内の説明文において「国民生活センターが商品テストをしたと誤認させる表示」と判断されました。
項目 | 概要 |
対象商品やサービス | 粉末飲料 |
表示媒体 | パンフレット |
表示内容 | 国民生活センターによる商品テストの結果、対象商品が日本で一番ポリフェノール含有量の高い粉末飲料であるかのように示す表示 |
実際の内容 | 国民生活センターは商品テストをしていない |
この事例も前の事例と同じく、パンフレットを見た時点では、優良誤認表示だと気づくのはなかなか難しいと言えます。
しかし国民生活センターのホームページでは最近実施したテスト項目や、商品テストの結果を公表しているため、あやしいと感じたら確認しましょう。
ベビーカーの通気性が「優良誤認表示」と判断された事例
引用元:消費者庁「景品表示法関係ガイドライン等|景品表示法における違反事例集」
リーフレットの説明で、ベビーカーのシート部分に「通気性はない」にもかかわらず、あると誤認させる表示と判断された事例を紹介します。
項目 | 概要 |
対象商品やサービス | ベビーカー |
表示媒体 | リーフレット |
表示内容 | 内部にウレタンを使用した自社従来品のシート部分と対象商品を比較すると、約11倍の通気性があるかのように示す表示 |
実際の内容 | 対象商品のシート部分に通気性はない |
この事例もリーフレットの内容を見ただけでは優良誤認表示だと気づくのは困難です。
その場で「事実ではない記載がある」と判断するのは難しいですが、「事実ではないことを記載した広告もあること」は知っておきましょう。
優良誤認表示と混同しやすい3つの表示
景品表示法によって規制される表示の中で、優良誤認表示と混同しやすい言葉を3つご紹介します。
優良誤認表示と有利誤認表示の違い
有利誤認表示は、景品表示法第5条第2号で次のように定義づけられています。
項目 | 概要 |
有利誤認表示をさせる可能性がある人 | 事業者 |
有利誤認表示の被害にあう可能性がある人 | 一般消費者 |
有利誤認表示の対象 | 取引する商品・サービスの価格や取引条件 |
有利誤認表示だとされるもの | 1.実際の商品やサービスより著しく有利だと一般消費者に誤認させる 2.競合他社の商品やサービスより著しく有利だと一般消費者に誤認される 1と2、いずれかの条件を満たし、不当に顧客にアピールして一般消費者の主体的で理にかなった判断を邪魔する可能性がある表示 |
優良誤認表示と有利誤認表示の大きな違いはその対象です。優良誤認表示は取引する商品・サービスの品質や規格であるのに対し、有利誤認表示は価格や取引条件となっているのです。
優良誤認表示と誇大広告の違い
誇大広告とは商品やサービスを宣伝する時、実際のものよりも著しく優良・有利だと一般消費者に誤認させる広告のことです。
優良誤認や有利誤認をまねく広告表示だと考えるとわかりやすいでしょう。
誇大広告も一般消費者を保護するため、景品表示法による規制を受けており、この点は優良誤認表示と変わりません。
優良誤認表示と不当表示の違い
不当表示とは商品やサービスについて一般消費者に情報を伝える時、実際のものよりも著しく優良・有利だと一般消費者に誤認させる表示のことです。
消費者庁は優良誤認表示や有利誤認表示の疑いがあれば、事業者に表示の根拠となる資料の提出を求めます。
もし事業者が資料を提出できなければ、その表示は不当表示と見なされるのです。
不当表示も一般消費者の保護を目的として、景品表示法で規制されています。
まとめ
優良誤認表示による返金措置については、景品表示法第10条と第11条に、対象者や金額が定められています。
もし優良誤認表示により望まない商品やサービスを購入してしまったら、消費者庁のホームページで返金措置が行われているかを確認し、速やかに手続きを進めましょう。
自分だけでは手続きを進めにくい場合は、司法書士や弁護士への相談も検討してみてください。