詐欺的手法の被害にあったにもかかわらず、証拠を見つけられずに泣き寝入りしてしまうケースが後を絶ちません。被害にあったまま放っておくと状況は悪化するため、すぐにやるべきことがあります。
今回は、詐欺的行為の被害にあったらすぐにやっておきたいことのほか、泣き寝入りしてしまう理由や法的に有効な証拠、証拠がない場合の対処法を紹介します。泣き寝入り状態になっている方は、ぜひ参考にしてください。
✓証拠がなくて泣き寝入りする人が多い理由
✓法的に有効な証拠
✓証拠がない場合の対処法
泣き寝入りせずすぐにやっておきたいこと
泣き寝入りせずにすぐにやっておきたいことには、以下のようなものが挙げられます。
- クーリングオフできるか確認して申請する
- 販売事業者へ和解交渉する
- クレジットカード会社へ抗弁を申請する
- 決済代行会社へ連絡する
詐欺まがいの悪徳商法にあった場合、被害を最小限に食い止めるためには、スピード感をもって対応することが大切です。ここでは、それぞれのやっておきたいことについて解説していきます。
クーリングオフできるか確認して申請する
騙されたと思った取引があった場合、クーリングオフできるか確認しましょう。申請できれば違約金なしで契約解除ができたり、購入代金が返金されたりするため、泣き寝入りを避けられるでしょう。
クーリングオフは「特定商取引法」に該当している場合に申請可能です。具体的には次のような取引が挙げられます。
- 訪問販売
- 訪問購入
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引
- 特定継続的役務提供
- 業務提供誘引販売取引
まずは自分が行った取引が対象か、チェックしてみましょう。
販売事業者へ和解交渉をする
クーリングオフが適用されない取引の場合に検討すべきなのが、販売事業者への「和解交渉」です。この場合、返金を求めて販売事業者と話し合う必要があります。
しかし、返金に応じない業者も多く、話し合いが進まないこともあるでしょう。和解交渉をスムーズに進めるためには、司法書士や弁護士を代理人としてたてる手段が有効です。
交渉を成功させるためには、司法書士や弁護士の実績をみて依頼先を決めるとよいでしょう。特定の分野を得意としている事務所に依頼することで、交渉が成功する確率を上げられます。
専門家に依頼する際には、依頼内容と専門家の得意とする内容が合致していることが大切です。
クレジットカード会社へ抗弁を申請する
クレジットカード会社への対処としては、支払いの取り消しと一時的な引き落としの停止処置を申請しましょう。支払いの取り消しはチャージバックと言われています。和解交渉がうまくいかなかったケースでも、承認されることによって以降の支払いが不要となり、それまでのお金が戻る場合もあります。
一方の一時的な引き落としの停止は、「支払い停止の抗弁を主張する」こととなります。認められると、販売事業者との和解交渉中であっても支払いを一時的に止められます。
クレジットカード会社へ被害者本人が連絡することになりますが、簡単に申請は通りません。和解交渉と同様に、専門家である司法書士や弁護士に相談しましょう。
決済代行会社へ連絡する
販売事業者の素性がわからない場合は、決済代行会社に情報開示の申請をしましょう。相手方の情報がない状態では、各種対応がスムーズに進みません。
連絡するときは、わかる範囲で取引内容を整理し、決済代行会社に伝えられるようにしておくとよいでしょう。もし自分でやりとりする自信がないのであれば、司法書士や弁護士へ依頼してください。
証拠がなくて泣き寝入りする人が多い理由は?
証拠がなくて泣き寝入りしてしまうには、以下のような理由があります。
- 詐欺的行為に関する情報があまり出回っていないため
- 詐欺的行為にあうことを想定しておらず、情報を記録していないため
- 相談先がわからないため
- 相談する費用がないため
ここではそれぞれの理由について、詳しく解説していきます。
詐欺的行為に関する情報があまり出回っていない
詐欺的行為の具体的手法などの情報は多いものの、相手方の情報は少ないものです。その理由は、詐欺的手法をする側は、取引後に証拠を残さず逃げてしまうケースが多いためです。
たとえば、詐欺的手法を使うサイトを特定できたとしても、情報共有される頃にはサイトが閉鎖されています。悪徳な業者は再び違うサイトを作り、詐欺的行為を続けます。
「警察庁Webサイト」で特殊詐欺被疑者の一斉公開捜査によって情報を公開しているものの、数は少なく限定的です。
詐欺的手法から身を守るには、国民生活センターなどで相談事例を確認し、ありがちな被害ケースについて把握しておくことが大切です。
詐欺される想定で情報を記録しないから
一般的になにか取引をする際、詐欺的手法にあう想定では行動しないものです。さらに相手は詐欺的手法を用いてお金をだまし取ることに慣れているため、警戒されないように近づきます。
身元を特定できないようにしていたり、直接対面せずに取引したりして、逃げやすい状況を整えているでしょう。被害にあったと気づいたときには、すでに逃げられてしまい、泣き寝入りしてしまうケースが多くみられます。
相談先がわからないから
初めて被害にあう方は、どこに相談したらよいかわからない場合もあるでしょう。詐欺的手法の被害にあった場合、被害者1人で解決するのは難しいかもしれません。
なぜなら、相手が法律に違反していることを調べる必要があるためです。根拠もなく相手に訴えかけても、被害回復は難しいでしょう。
また、販売事業者とのやりとりは精神的・時間的な負担も大きくなります。相談先に見当がつくだけでも、気持ちが楽になるでしょう。泣き寝入りとならないよう、まずは最寄り警察署や国民生活センターなどに問い合わせてみましょう。
相談する費用がないから
専門家である司法書士や弁護士などへ相談することで、泣き寝入りしてしまう案件を解決できる可能性は上がります。ただし、相談したり依頼したりするための費用がかかるため、誰でも気軽に利用できるわけではありません。
詐欺的手法にあった直後は、お金がない状態と考えられます。費用を捻出できない状態で解決を目指すならば、無料相談の利用を検討しましょう。また分割払いの相談ができる事務所も数多くあります。
法的に有効な証拠はなにがある?
販売事業者との交渉を有利に進められる、法的に有効な証拠は以下のとおりです。
- 写真や動画
- メールやSNS
- 録音データ
- 領収書やクレジットカードの明細
どのようなものが法的に有効な証拠となるか、それぞれについて見ていきましょう。
写真や動画
取引の様子を写真や動画などで残しておきましょう。実際に対面して取引していたのであれば、取引の状況や商品の状態がわかります。商品の特徴を撮影することで、騙された証拠になる可能性があります。
また、日時や場所、販売事業者の顔といった情報は各関係機関への提供資料にもなります。その後の交渉を有利に進められるでしょう。
取引の前に、取引を動画に残すと販売事業者に宣言しておけば、違法な取引に対しての牽制にもなります。宣言して引き下がるようであれば、相手方は購入者を騙そうとしている可能性があったと言えます。
メールやSNS
メールやSNSのやりとりも詐欺的な手法の証拠として残せます。対面の取引でない場合、販売事業者とのやりとりはメールやSNS上で行われることがほとんどです。
やりとりを消さずに残しておくことで、不正な取引と言える証拠が残っているかもしれません。データは基本消さずに残しておくのが、泣き寝入りしないための方法です。専門家や警察に提出できるよう、常に整理しておきましょう。
録音データ
販売事業者と電話やWeb会議ツールを使ったやりとりがあった場合、録音データも証拠になり得ます。専門家であれば法に触れる発言を見抜けるため、相手方の声を残せるときはなるべく録音しましょう。
動画撮影でも同様に、声が残ることで不正な取引の証拠になる可能性があります。怪しい取引などは、いつでも録音できる準備をしておきましょう。
領収書やクレジットカードの明細
領収書やクレジットカードの明細が証拠となる場合もあります。一例として、契約書に記載のない引き落としがあるケースが考えられるでしょう。詐欺的行為を直接証明することはできなくとも、他の情報に結びつけることで、和解交渉の材料にできる可能性もあります。
日付や場所が証拠になることもあります。クレジットカードの利用明細はインターネット上でも参照できるため、該当する取引が載っていないかチェックしましょう。クレジットカードによる支払いの形跡がある場合、クレジットカード会社や決済代行会社へ働きかけることもできます。
証拠がない場合の対処法
証拠がない場合は、「自力で証拠を集める」か「弁護士・司法書士に相談する」という対処になります。それぞれの対処法について詳しく紹介していきます。
自力で証拠を集める
証拠になり得るものを自力で探すのが、証拠がない場合のひとつの対処法です。労力はかかりますが、経費をかけずに証拠を集められます。
ただし、証拠をねつ造することはやめましょう。とくに写真や動画、録音データはある程度の技術を持っていればねつ造しやすい証拠です。疑われないためには、加工していないことを証明できる形で証拠を残す必要があります。
クレジットカードの明細を例を挙げて説明します。スマホのスクリーンショットで残すよりも、明細をダウンロードできるURLを残す方が、信ぴょう性は高まります。
また、違法な方法で証拠を探すのはやめましょう。例えば取引中、相手がトイレに行った隙にPCやスマホをのぞいて証拠を探したり、メモ帳やスケジュール表をのぞいたりといった行為が該当します。すでにある情報から証拠を探すのが基本です。
違法な手段が発覚した場合、自分が訴えられることにもつながります。
弁護士・司法書士に相談する
騙された証拠がない場合、弁護士や司法書士に相談して探すこともできます。その際、次のことをしておくと話が進めやすくなります。
- 相手方の情報を集める
- 内容を時系列でまとめる
それぞれについて詳しく紹介します。
相手方の情報を集める
相手方の情報は極力残しておきましょう。返金請求などの交渉に有効な情報は、次の4つです。
- 住所
- 氏名
- 電話番号
- チャットなどの連絡先
相手方の情報を残しておけば、たとえ連絡がとれなくなっても身元を把握できる可能性は上がります。サイトから誘導されたのであればURLやサイト名を控えたり、SNSも同様にURLやアカウント名を残したりしておきましょう。
ただし、多くの悪徳業者は追求されていると感じると、サイトやSNSアカウントを消してしまいます。相手方に悟られる前に、証拠を集めておくことが重要です。
内容を時系列でまとめる
詐欺的行為の被害にあったと感じたら、取引の内容を時系列順にまとめておきましょう。取引に至る経緯もまとめておくと、弁護士や司法書士に相談したり、クーリングオフを申請したりする場合に役立ちます。
文書としてやりとりを書き出すことで、自分自身の頭の整理もできるため、相談先への情報提供も円滑に進められます。改めて書き出すことで、新たな証拠を発見できる可能性もあるでしょう。
どうしたらよいか悩んだらまずは司法書士に相談を
詐欺的行為の被害にあった場合、すぐにやるべきことを解説しました。どうしたらよいか悩んでしまうときは、司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。
時間が経ってしまうと、クーリングオフが申請できなくなったり、相手方に逃げられてしまったりと、自分が不利になることばかりです。
くわえて、詐欺的手法は巧妙です。自分ひとりで立ち向かっても、うまくかわされてしまうことも少なくありません。
なるべく証拠となるものをかき集めつつ、可能であれば司法書士や弁護士といった専門家に連絡してみましょう。
なお以下の記事では、司法書士に相談した場合の返金方法について解説しているため、そちらも合わせて参考にしてください。
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