詐欺被害にあい、被害届の提出を検討している方も多いでしょう。
警察に被害届を提出すれば犯罪被害にあった事実を申告できますが、たとえ捜査が進み相手方が逮捕されても、自動的に返金されるわけではないことをご存知でしょうか。
本記事では、被害届の書き方や提出方法を紹介するとともに、詐欺で騙し取られたお金を取り戻す方法も解説します。
迅速な行動で、一日も早い被害回復を目指しましょう。
- 被害届の書き方や提出方法
- 被害届を提出したあとの流れ
- 詐欺の被害届が受理されない理由
- 被害届が受理されてもお金が返ってこない理由
- お金を取り戻したいときの相談先
被害届とは
被害届とは、犯罪被害にあった事実を警察などの捜査機関に申告する書類です。
被害届に捜査の開始を義務付ける法的効果はありませんが、提出することで警察が事件を把握し、捜査のきっかけとなる重要な書類です。
被害届の書き方
本来、被害届は被害者本人が作成するものです。
ただ、書類には一定の様式があり、正確な情報の記載が求められるため、実際は警察官が被害者からの聞き取りをもとに代筆するのが一般的です。
【詐欺の被害届を提出するときに聞かれる内容】
- 被害者の氏名・生年月日・住所・連絡先・職業
- 詐欺が発生した年月日時
- 詐欺が発生した場所
- 被害内容の詳細(騙された経緯や被害額など)
- 被疑者の情報(氏名・住所・職業・年齢などわかる範囲で)
警察官に質問された内容に答えられるよう、あらかじめ事実を整理しておきましょう。
「被疑者とどこで出会い、どのように騙されたのか」といった被害の経緯を時系列でメモにまとめておくのがおすすめです。
被害届の提出方法
原則として被害届は全国どの警察署・交番でも提出できますが、被害内容によっては交番で対応してもらえないことがあります。
スムーズに対応してもらうためには、事件が発生した地域を管轄する警察署の窓口に直接提出しましょう。
被害発生直後であれば、110番通報して警察官に現場へ来てもらう方法も有効です。
警察官がその場で状況を確認し、必要に応じて被害届の提出を促してくれます。
なお、被害届は原則として被害者本人が提出します。
【被害届の提出時に必要な持ち物】
- 運転免許証などの身分証明書
- 印鑑
- 詐欺の証拠
詐欺の証拠がない場合は被害届が受理されない可能性が高くなるため、できるだけ多くの証拠を持参しましょう。
ただし、被疑者の指紋が付着している可能性があるなど、証拠の保全が必要な場合は事前に警察に相談してから持ち込むのが無難です。
被害届の作成や提出に費用は一切かかりません。
被害届の提出期限
法律上、被害届の提出期限は定められていないため、被害者はいつでも被害届を提出できます。
ただし、時間が経過するほど証拠が薄れ、詐欺罪の場合は犯罪の発生から7年が経過すると公訴時効(こうそじこう)により被疑者の刑事責任を問えなくなります。
騙されたと気づいた時点で、できるだけ早めに被害届を提出しましょう。
被害届と告訴・告発との違い
捜査機関に犯罪被害を申告する方法は、被害届のほかに告訴や告発もあります。
被害届は「このような被害にあった」という事実の申告にとどまり、処罰を求める意思表示は必須ではありません。
また、被害届が受理されたとしても、捜査を行うかどうかは警察の判断に委ねられます。
一方、告訴や告発には被疑者の処罰を求める意思表示も含まれており、警察が受理すれば捜査を開始する義務が生じます。
項目 | 被害届 | 告訴 | 告発 |
目的 | 被害申告 | 被害申告+処罰意思 | 被害申告+処罰意思 |
届出できる人 | 被害者 | 告訴権者 (被害者・法定代理人) |
第三者 (告訴権者・被疑者以外) |
捜査義務 | なし | あり | あり |
被害届や告訴は原則として被害者本人しか提出できませんが、告発は誰でも(告訴権者・被疑者を除く)できます。
「被疑者を処罰してほしい」という強い意思がある場合は、捜査機関に捜査義務が生じる告訴・告発のほうが効果的な可能性があります。
ただし、告訴状や告発状は個人での作成が難しく、詐欺罪の成立要件を満たさない・証拠が不十分などの理由で受理されないケースも多く見られます。
告訴・告発を検討する際は弁護士のサポートを受けるのが一般的です。
被害届を提出したあとの流れ
被害届を提出した後は、どのような対応が行われるのでしょうか。
ここでは、捜査や刑事手続きの流れを解説します。
1.事件性の確認
被害届が提出されると、警察は「被害内容が犯罪に該当するか」を確認します。
被害者への事情聴取や提出された証拠をもとに「事件性がない」「警察の介入が不適切である」と判断された場合、被害届が受理されないことがあります。
2.捜査開始
被害届が受理され、警察が「捜査の必要性あり」と判断した場合は捜査が開始されます。
主に関係者への事情聴取や証拠収集、被疑者の特定、取り調べなどが行われますが、すぐに進展するとは限らず、捜査に時間がかかることも少なくありません。
被疑者に十分な疑いがあり、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断された場合は逮捕によって身柄を拘束するケースもあります。
3.送検
捜査が終われば、警察は事件を検察官に引き継ぎます。
これを送検(法律用語では送致)といいます。
送検(送致)には、被疑者を逮捕して身柄とともに検察に送る「身柄送検」と、被疑者を逮捕せず書類や証拠物のみを検察に送致する「書類送検」の2種類があります。
4.起訴・不起訴
送致を受理した検察官は、捜査書類の確認や被疑者への事情聴取を行ったうえで「起訴するか」「不起訴にするか」を判断します。
被疑者が起訴されると、刑罰の有無や内容を決めるための刑事裁判が開かれます。
裁判で有罪判決が下されると、被告人にどのような処罰を科すかが決定されます。
一方、不起訴処分となった場合は捜査が終了し、事件も終結します。
詐欺の被害届が受理されない理由
被害届を提出すれば必ず受理されるわけではなく、内容や状況によっては受け取ってもらえないこともあります。
ここでは、詐欺の被害届が受理されない主な理由を解説します。
民事事件と判断された
警察には、私人間のトラブル(民事事件)には介入しないという民事不介入の原則があります。
したがって、刑事事件としての事件性がない(犯罪にあたらない)と判断された場合は被害届が受理されません。
この場合、別の相談窓口の案内や防犯上のアドバイスに留まります。
なお、警察には被害届を受理する義務がありますが、これは犯罪による被害が存在することが前提です。
明らかに犯罪に該当しない内容であれば、被害届を受理する義務はありません。
詐欺被害の証拠が不十分
詐欺にあったことを客観的に立証できる証拠がなければ、被害届は受理されません。
証拠がなければ、警察は「被害が本当に起きたのか」「詐欺にあたるのか」を判断できないためです。
詐欺被害は被害者の言い分だけでは判断が難しく、証拠や状況に応じては「単なる金銭トラブル」「認識の食い違い」と捉えられてしまう可能性もあります。
そのため、被害届を提出する際は、手元にある関連書類をすべて持参することが重要です。
相手方の特定が困難
警察が捜査を進めるには「誰が関与しているか」という手がかりが必要です。
そのため、相手方の身元がわからない、または捜査しても特定が難しいと判断された場合は、被害届が受理されないケースもあります。
特に相手方が海外にいる場合や所在不明の場合は捜査権限が及ばず、対応できないことも少なくありません。
ただし、被害額が大きい、同様の被害者が多い、社会的影響が大きいと判断された場合などは、相手方が不明でも被害届が受理される可能性があります。
とはいえ、警察の対応力や予算には限界があり、すべての事件に対して十分な捜査を行うのは現実的に難しいのが実情です。
被害が少額
被害額が数千円~1万円程度の少額の場合も、被害届が受理されにくい傾向があります。
警察は日々多くの事件に対応しており、より深刻で緊急性の高い事件が優先されるため、軽微な被害はどうしても後回しにされてしまいます。
ただし、金額の大小だけで判断されるわけではなく、「事件の悪質性が高い」「放置すれば被害者が増える可能性がある」と判断された場合は、少額でも被害届が受理されることもあります。
公訴時効を過ぎている
被害届を提出した時点で公訴時効が成立している場合、警察は捜査を行えず、被害届も受理されません。
公訴時効とは、犯罪が発生してから一定期間が経過すると、検察が起訴できなくなる制度のことです。
公訴時効が設けられているのは、時間が経過するほど証拠の収集が困難になり、人の記憶も曖昧になるためです。
公訴時効の期間は犯罪の種類や重さによって異なり、詐欺罪の場合は7年です。
時効のカウントが始まるのは「被害者が犯罪に気づいた日」ではなく「犯罪が終わった時点」である点に注意が必要です。
警察の人員不足
警察官の人員不足は深刻化しており、限られた人員と時間のなかで事件の優先度に応じて対応せざるを得ないのが実情です。
原則として、人員不足を理由とした被害届の不受理は認められていませんが、軽微な事件も含めてすべて対応するのは物理的に不可能といえます。
詐欺の被害届が受理されればお金が返ってくるわけではない
上記の理由から、警察に被害届を提出しても受理されないケースも少なくありません。
「相手方に処罰を与えたい」という目的であれば警察に被害届や告訴を受理してもらう必要がありますが、被害届が受理されても、自動的にお金が返ってくるわけではありません。
警察の仕事は犯罪者を逮捕することであり、騙し取られたお金を取り返してくれるわけではない点に注意が必要です。
\返金への第一歩!/
返金を求める場合は司法書士・弁護士への相談が有効
刑事裁判はあくまで加害者の処罰を目的としており、被害者に対する返金までは保証されません。
そのため、被害届が警察に受理されたかどうかにかかわらず、お金を取り戻すには民事手続きによる返金請求が必要です。
具体的な方法としては、クーリング・オフ制度の利用や内容証明郵便の送付、詐欺に使われた口座の凍結申立て、民事訴訟などが挙げられます。
なかには自分で行える手続きもありますが、法律知識が求められるうえ、相手方が応じないことも多いため、司法書士・弁護士のサポートを受けたほうが返金に成功する可能性が高まります。
司法書士や弁護士であれば、クレジットカード会社や決済代行会社への交渉、業者の特定など、個人では難しい方法にも対応可能です。
なお、司法書士は刑事事件の代理人にはなれませんが、認定司法書士であれば簡易裁判所における1件140万円以下の民事事件について代理人として対応できます。
無料相談に対応している司法書士・弁護士事務所もあるため「返金される可能性はどれくらいあるか」「自分のケースでは、どのような返金方法が適しているか」といったアドバイスを求めてみることをおすすめします。
以下記事では、「騙されたお金を取り戻す方法」について詳しく解説しています。
「騙されたお金を取り戻す方法は」「実際に手元にお金が戻ってくるのはいつごろなの?」などという疑問や不安な気持ちを抱いたことはありませんか? 詐欺にあい、金銭を騙し取られた場合も、すぐに諦める必要はありません。 早急に対応すれば、返金[…]
まとめ
被害届は犯罪被害にあった事実を警察に知らせるための書類であり、受理されたからといって必ずしも捜査が行われるとは限りません。
たとえ捜査が開始され、相手方が起訴されて有罪判決が下されたとしても、自動的に返金されるわけではない点にも注意が必要です。
お金を取り戻したい場合は、刑事事件とは別に、民事手続きによる返金請求が必要です。
丹誠司法書士法人では、詐欺被害にあわれた方の返金請求のサポートを行っています。
詐欺被害の解決実績が豊富な認定司法書士が、業者の調査から返金交渉まで対応いたします。
相談は無料ですので「騙されたお金を取り返したい」「どこに相談すればいいのかわからない」とお悩みの方は、一度お話をお聞かせください。
\無料相談はこちらから!/