「借金の返済が大変…。自己破産するしかないかもしれない」
自己破産して借金をなくしたいと考えている人は多いと思います。しかし、安易に自己破産をするのはおすすめしません。
この記事では、裁判所から自己破産が認められないケースや自己破産が適している人の特徴を紹介します。
- 自己破産の概要と種類
- 自己破産が認められないケース
- 自己破産が適している人の特徴
- 自己破産のメリット・デメリット
自己破産とは
自己破産とは、裁判所へ「破産申立書」を提出し、債務を整理する法的手続きです。
自己破産の手続きが開始され、裁判所が出す免責許可決定(借金免除の許可決定)に債権者からの反対がなければ、支払いの義務は免除されます。
「支払い不能」の状態にならない限り、自己破産はできないと破産法によって定められています。以下の条件を満たしている人は、破産を許可される可能性が高いでしょう。
- 支払い不能であること
- 対象の借金が非免責債権ではないこと(税や養育費など)
- 免責不許可事由に該当しないこと
申立人が支払い不能かどうかは、裁判所の判断に委ねられます。
そのため、自動車や家などの所有している資産や働いて得られる収入などがわかる資料、陳述書や債権者一覧表など多くの書類を準備する必要があります。
自己破産の手続きの種類について
自己破産は「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類に分かれます。
判断の基準としては、裁判所への申し立て時に価値のある財産があるかどうか、免責不許可事由の有無が挙げられます。
それぞれの特徴と内容を解説するので、参考にしてください。
同時廃止事件
同時廃止事件とは、申立人が債権者へ配分すべき財産を持っていない場合に行われる破産手続き方法です。
適用されるのは以下のような場合です。
- 申立人が20万円以上の財産や33万円以上の現金を持っていない場合
- 免責不許可事由がないことが明らかな場合
同時廃止事件では、申立人の財産を管理・処分する破産管財人は選任されず、破産手続きは開始と同時に終了します。
その後は免責許可の決定・確定を待つだけのため、次に紹介する管財事件と比べるとシンプルな手続きといえるでしょう。
管財事件
管財事件とは、申立人が一定以上の財産を持っている場合に行われる破産手続き方法です。
適用されるのは、以下のような場合です。
- 申立人が20万円以上の財産や33万円以上の現金を持っている場合
- 免責調査を行う必要がある場合
管財事件は、裁判所が選任した弁護士が破産管財人となり、申立人が持つ財産の調査・管理や債権者への配当手続きを行います。そのため、同時廃止事件に比べて時間がかかります。
また、申立人は裁判所への申立費用のほか、管財人への報酬を払う義務も生じます。
自己破産が認められないケースや条件
自己破産はどんなケースでも認められるわけではありません。
膨れ上がった借金の原因が免責不許可事由に該当しないと、裁判所に判断してもらう必要があるためです。
自己破産できないケースや条件を含めて、解説します。
免責が認められない借金の場合
ギャンブルや浪費、射幸行為(宝くじなど偶然の利益を目的とする行為)によって作られた借金は、原則として免責不許可事由に該当します。
具体例は以下のとおりです。
- 収入以上の高級品やブランド品を購入する
- 風俗店やキャバクラ、ホストクラブなどで多額のお金を浪費する
- 株や競馬、パチンコなどの賭け事に浪費する
ただし、裁量により免責許可が下りるケースはあります。
『2020年日弁連破産事件及び個人再生事件記録調査』によると、調査対象の2019年に自己破産を申し立てた人のうち、96.85%が免責許可を得ています。
負債原因はギャンブルによるものが7.18%、浪費や遊興費が原因のものは11.37% を占めています。
つまり、免責不許可事由があっても自己破産が認められるケースは少なくないと言えます。
財産の隠匿や換金行為を行った場合
所有している資産や貯金を意図的に隠した場合、免責が不許可となる可能性があります。
具体例には以下のような行為が挙げられます。
- 貯金の残高を家族名義の別口座に移す
- 所有している不動産の登記を友人に変更する
- 車を友人や家族に譲る
裁判所へ申告する際は、すべての資産状況を虚偽なく報告しましょう。
また、クレジットカードのショッピング枠を現金に換える行為も、免責不許可事由となる可能性があります。
この行為はクレジットカード会社の規約違反であり、違法行為などを助長するとして金融庁や消費者庁からも問題視されています。
特定の債権だけを返済した場合
自己破産手続きを進める際、債権者は公平に扱う必要があります。
しかし、特定の債権者の借金だけを優先して返済する行為(偏頗弁済:へんぱべんさい)は、免責不許可事由に該当する可能性があります。
具体例には以下のような行為が挙げられます。
- 連帯保証人である家族のみに返済する
- 車のローンのみ返済する
複数の借り入れがある場合、手続きを円滑に進めるためにも弁護士や司法書士と相談しながら適切な手続きを踏みましょう。
自己破産をしたほうが良い人の特徴
自己破産が適している人の特徴を紹介します。
自己破産は、借金がどうしても返済できない場合の最後の選択肢です。
特徴を理解することで、自己破産後の後悔を防げるでしょう。
自身の状況が自己破産に適しているかどうか判断が難しいという方は、以下の記事を参考にして無料相談を利用してみてください。
借金返済の見通しが立たずに自己破産を検討しているものの、どこに相談すべきか悩んでいませんか。 本記事では、自己破産について気軽に相談できる無料の窓口を紹介します。信頼できる相談先を見つけ、借金問題の早期解決を目指しましょう。 ✓自己[…]
特徴1.借金の返済の見通しが立たない
多額の借金や高い利子のローンを抱え、現実的に返済が困難な場合、自己破産は有効です。
借金を滞納している、または毎月の返済負担が大きく生活が困窮している場合は、債務整理を検討しましょう。
一人で悩まず、まずは司法書士法人や弁護士に相談してください。
特徴2.生活保護を受給している・収入がない
病気や介護、障がいなどの理由で働けなくなり、生活保護を受給しているケースも自己破産を検討する一因となります。
リストラや収入減少により毎月の返済が苦しいだけでなく、日々の生活費さえままならない場合、自己破産は生活再建のための選択肢として考えられるでしょう。
特徴3.家や車などの財産を持っていない
売却できる家や車などの財産がない人は、自己破産が適しているといえます。
価値のある財産を持つ場合、自己破産をすると資産が借金の返済に充てられるためです。
所有している家や車を失いたくない場合は、ほかの債務整理の手続きを視野に入れましょう。
自己破産のメリット
自己破産のメリットを紹介します。
マイナスなイメージがつきやすい自己破産ですが、ほかの債務整理とは異なる利点が多くあります。
借金の返済義務がなくなる
自己破産をすると、債権者への支払い義務が免除されます。
そのため「今月もAさんに3万円を支払わないといけない」といった精神的な負担から解放されるでしょう。
毎月の支払いが不要になれば将来に向けた貯金が可能となり、人生をやり直せるでしょう。
利息部分のカットや一部免除だけではなく、すべての借金の返済義務がなくなる手続きは自己破産だけです。
なお、税金や養育費、一部の損害賠償金といった「非免責債務」は免除されないので注意しましょう。
一定の財産・現金を残せる
自己破産をしても、時価20万円以下の資産や99万円以下の現金は、通常「自由財産」として保有が認められます。
そのため生活に必要な家電や家具など、日常生活に最低限必要な範囲での財産は手元に残ります。
ただし、価値が高い家や車などの資産を所有している場合は売却され、借金の返済に充てられる可能性があります。
不安がある場合、任意整理や個人再生といった他の債務整理方法を検討すると良いでしょう。
自己破産のデメリット
自己破産のデメリットを紹介します。
「借金をゼロにできる」ことだけを考えると、自己破産をしたくなる人が多いと思います。
しかし、リスクもあるので安易に自己破産をするのは控えましょう。
約5〜10年間、新たな借り入れができない
自己破産をすると、クレジットカードの使用や新たな借り入れが最大で約10年間できなくなります。これは信用情報に自己破産の情報が掲載されるからです。
そのため、車のローンや住宅ローンを組む際に支障が出てしまいます。
この期間中は金融機関の審査が通りにくいため、新たな借金ができないことを理解しておきましょう。
周囲に知られる・保証人が影響を受ける
自己破産をすると「官報」に名前や住所が掲載されます。
官報はインターネット上で閲覧できるほか、誰でも入手可能なため、家族や知人、勤務先の人に知られる可能性がないとは言い切れません。
保証人がいた場合は、保証人に借金返済の義務が残ります。
保証人が返済できない場合、最終的に保証人も自己破産が必要になるかもしれません。
周囲に自己破産をしたと知られたくない場合や保証人がいる場合は、慎重に検討してください。
時価20万円以上の財産が没収される
自己破産をすると、時価20万円を超える資産は原則として換金され、借金の返済に充てられます。
具体例は以下のとおりです。
- バイク・自動車
- 時計
- 指輪・ネックレス・ブレスレットなど
- 金・プラチナ
- 現金・預貯金・積立金
- 生命保険および解約返戻金
- 退職金
債務整理を円滑に進めるためにも、没収されたくないからといって意図的に財産を隠すのはやめましょう。
自己破産の手続きの流れについて解説
ほかの債務整理と比べて、自己破産は時間がかかります。
具体的な手続きの流れは以下のとおりです。
- 弁護士・司法書士に依頼
- 引き直しの計算
- 申立書類の準備
- 裁判所に申し立て
- 自己破産の手続きの開始
- 免責の許可
裁判所が申立人について支払い不能状態かつ免責不許可事由がないと判断すれば、手続きが開始されます。
同時廃止事件なら通常3〜4か月、管財事件なら通常6〜12か月ほどで手続きが終了するでしょう。
債務整理を検討している方は、当事務所へご相談ください
自己破産をすれば、借金をゼロにできます。そのため、自己破産を希望する方も多いでしょう。
しかし自己破産を選択すると、収入と支出を見直すことや借金を重ねた原因を振り返る機会を失ってしまいます。
その結果、再度多額の借り入れを繰り返す債務者が少なくありません。
自己破産を決断する前に、まずはほかの債務整理方法も検討しましょう。
当事務所(丹誠司法書士法人)では、ご相談者から状況をヒアリングした後、最善の債務整理方法をご提案いたします。借金のことでお困りでしたら、ぜひご相談ください。
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