「悪霊がついている」「運気が下がる」「このままだと不幸になる」このような言葉で不安を煽り、高額な商品やサービスを契約させる霊感商法は、今もなお多くの被害が報告されています。
目に見えない現象を利用して判断力を奪い、相談者の善意や不安に付け込む巧妙な手口により、気づいたときには深刻な金銭的・精神的ダメージを負っているケースも少なくありません。
本記事では、霊感商法の定義や違法性、実際の手口や事例、被害にあった際の対処法まで詳しく解説します。
- 霊感商法の典型的な手口
- 霊感商法でよくある勧誘文句
- 霊感商法の相談事例
- 霊感商法の被害にあったときの相談先
霊感商法とは
霊感商法とは、霊感や超能力などの特別な力を持つと称する者が、「たたり」や「霊」、「運気」といった科学的に検証できない現象を持ち出し、そのままでは重大な不利益が生じると不安をあおって商品やサービスの購入をすすめる行為です。
たとえば、「人に話すと運気が逃げる」などと告げて第三者に相談しにくい状況を作り出します。
また、「今、浄化をやめると状況がもっと悪くなる」といった言葉で恐怖心を煽り、自発的に行動しているように錯覚させるため、精神的にも抜け出しにくくなるのが特徴です。
多くの被害者は「自分は被害にあっている」という自覚が乏しく、結果として救済までに時間がかかり、被害の長期化・深刻化につながる傾向があります。
霊感商法で高額な請求を受けたり、支払いをした場合、騙されたお金を取り戻せる可能性があります。
以下の記事では、返金請求の具体的な方法について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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霊感商法の現状
消費生活センターへの「霊感商法(開運商法を含む)」に関連する相談件数は、2017年から2021年にかけて5年連続で1000件を超えていました。
女性が全体の約7〜8割を占めており、年代は60代〜70代の高齢者が中心です。
契約金額は年によって差がありますが、平均で70万円〜150万円程度と高額で、2020年には平均契約支払金額が100万円を超えています。
主な商品内容は、「占い・祈とうサービス」「デジタルコンテンツ(開運商品を含む)」「その他の開運関連商品」などで、近年は「インターネット通信販売」や「訪問販売」など手法が多様化しています。
霊感商法は法律で禁止されている
霊感商法は、令和4年末の臨時国会で成立し、令和5年6月1日に全面施行された「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(不当寄附勧誘防止法)」で、明確に禁止されています。
この法律では、6つの不当な寄附勧誘行為が定められており、その1つとして、霊感や合理的に実証困難な能力に基づき、個人やその親族の生命・財産などに関する不安を煽り、「不利益の回避のためには寄附が必要不可欠である旨」を告げる行為が禁止されました。
霊感商法のよくある手口
霊感商法では、巧妙に不安を煽り、心理的に追い込んで高額な商品やサービスを売りつけるものです。
たとえば、「無料の姓名判断」「手相診断」「開運セミナー」「占い」などを装って近づき、親しみやすさを演出します。
その後、「このままだと不幸になる」などと不安を煽り、印鑑や壺などを原価の数十倍~数百倍の価格で販売することがあります。
また、「人に話すと運気が逃げる」などと口止めし、第三者へ相談しにくい状況を作り出して被害者を孤立させる手法も確認されています。
さらに、「無料相談」や「安価な鑑定」として誘い、後から「祈とう料」「お祓い料」などの名目で高額な請求を行うなど、金銭的な負担を強いる巧妙なパターンも多く見られます。
霊感商法の典型的なセリフ例
霊感商法では、相談者の不安や悩みに付け込む形で、霊や運気、開運といった根拠のない言葉を用い、不安を煽って高額な商品やサービスを売りつける手口が多く見られます。
以下は、実際に用いられることが多いセリフの一例です。
- この家に入った瞬間に重たい気を感じました。良くない気が溜まっています
- 最近ついていないのは、悪い気がまとわりついているせいかもしれません
- 特別な祈りを込めた品であれば、悪い気を浄化できます
- これを玄関に置いておけば、運気の流れが変わっていくでしょう
- 運を味方につけるには、専用の印鑑を使うことが効果的です
- 今使っている印鑑では、運を逃してしまう可能性があります
- 朝にこれに手を合わせることで、心と空間が整っていきますよ
これらのセリフは、目に見えない恐怖や不安を植え付けることで相談者の冷静な判断を奪い、商品購入や高額契約へと誘導するために使われます。
\心当たりがある人はすぐ相談!/
霊感商法の事例
霊感商法の被害は、日常の些細なきっかけから始まるケースが多く見られます。
占いや相談相手になると装って近づき、霊的な不安を煽りながら高額な商品を売りつけたり、継続的な支払いを求めたりされるケースが多く報告されています。
ここでは、全国の消費生活センターへ寄せられた相談事例を3つ紹介します。
姓名判断をきっかけに高額な印鑑を購入させられたケース
被害者が占い師のもとで姓名判断を受けたところ、「字画が良くない」と指摘されました。
さらに、「先祖に供養されていない人がいる」と告げられ、毎日供養するなかで印鑑を押しながら心のなかで願うよう勧められた被害者は、30万円以上する印鑑を購入させられました。
その後、被害者は家族の幸せのために追加の印鑑も作成し、「毎月料金を支払えば幸せになれる」という言葉に従って支払いを続けました。
しかし、支払いが負担となり、やめたいと考えています。
「霊が見える」と脅され高額な数珠を買わされたケース
被害者は、雑誌に掲載されていた広告を見て9千円の開運ブレスレットを購入しました。
後日、その業者から電話があり、「名前を書いて送れば霊能者が運勢を見る」と言われました。
被害者が試しに名前を送ったところ、「先祖の供養をしないと親や子どもに災いが降りかかる」と告げられ、言われるままに供養代として50万円を振り込んでしまいました。
その後、業者から「祈とうが必要だ」と言われ、被害者はさらに300万円を振り込むよう求められました。
「誰かに話すと、その人にも災いが及ぶので話してはいけない」と口止めされていますが、被害者はあまりに高額な請求に疑問を感じ始め、消費生活センターへの相談に至りました。
「病気が治る」と言われて宗教団体に勧誘され入会金を払ったケース
ある被害者は、知人の女性から「あなたの病気が心配」「お金はかからないし病気が治るから」と言われ、連れて行かれた先で「浄霊」を受けました。
知人から「お金はかからない」と言われていたものの、浄霊後に「最低でも1万円の入会金が必要」と求められ、被害者は1万円を支払いました。
渡されたパンフレットの内容は理解できない点が多く、被害者は怪しげな宗教団体だと感じたそうです。
霊感商法は契約取消ができる可能性がある
「不当寄附勧誘防止法」では、霊感商法による勧誘は不当な寄附勧誘行為として禁止されています。
この法律では、霊感や特別な能力に関連した不安の煽りに基づき、精神的に冷静な判断ができない状態で寄附や購入をしてしまった場合、その意思表示を取り消すことが認められています。
契約の取消しは「被害に気づいたときから3年以内」または「契約から10年以内」のいずれか短い方の期間内であれば、手続き可能です。
また、契約者本人だけでなく、配偶者や子どもなどの家族も、生活費や養育費などを守る必要がある場合には、本人に代わって取消しを請求できます。
霊感商法にあったときの相談先
霊感商法は、不安や信頼を利用して契約を迫る巧妙な手口です。
気づいたときにはすでに高額な支払いが発生しているケースも多く、放置すると被害が拡大するおそれがあります。
冷静に対応するためにも、以下のような専門機関へ早めに相談することが大切です。
警察
契約や勧誘の過程に脅迫や詐欺的な言動があった場合は、警察への相談も有効です。
「#9110」に連絡すれば、最寄りの警察署や専門窓口につながり、状況に応じた対応を案内してもらえます。
場合によっては、被害届の提出や刑事事件としての捜査が行われることもあります。
消費生活センター
「霊的な理由で高額な商品を買わされた」「解約の方法がわからない」といったケースには、消費生活センターの活用が効果的です。
全国共通の「188(イヤヤ)」に電話すれば、お住まいの地域のセンターにつながり、相談員が無料でアドバイスをしてくれます。
相談内容に応じて、クーリングオフ制度の適用や、業者への連絡方法、交渉に必要な書類などについても案内してもらえます。
司法書士・弁護士
不当寄附勧誘防止法などの法律に基づいた対応が必要な場合は、司法書士や弁護士への相談を検討しましょう。
高額な契約の取消しや返金請求をしたいとき、あるいは相手が強硬な態度を取っている場合に、代理人として交渉や訴訟手続きを依頼することが可能です。
「合理的な判断ができない状態で契約した」と認められる場合は、法律上、契約を取消せる可能性も高く、弁護士や司法書士に相談することで適切にサポートしてもらえます。
\すでにお金を払ってしまったら/
まとめ
霊感商法は、不安や悩みに寄り添うふりをして相談者の冷静な判断を奪い、高額な商品や継続的な支払いを迫る悪質な行為です。
たとえ「無料相談」「開運グッズ」といった名目であっても、不安を煽る言動や強引な勧誘があった場合には、霊感商法の可能性があります。
令和5年から施行された「不当寄附勧誘防止法」により、霊感商法に関わる不当な勧誘行為は法律で明確に禁止されています。
被害に気づいたら、消費生活センターや司法書士・弁護士に相談することで、契約の取消しや返金といった対応が可能になる場合もあります。
1人で抱え込まず、少しでも「おかしい」と思ったら、早めに相談しましょう。
「もしかして霊感商法かもしれない…」「誰に相談すればいいのかわからない…」と感じたら、丹誠司法書士法人にご相談ください。
霊的な不安を煽られて契約してしまった方からのご相談を、丁寧にお受けします。
ご相談内容の大小にかかわらず、安心してご相談いただける環境を整えておりますので、まずはお気軽にお話をお聞かせください。