情報商材の購入や情報源が不明なプラットフォームの利用によって、詐欺的行為の被害にあってしまった際、どのような対処をすればよいのかわからない方も多いでしょう。また、被害で借金を負ってしまった場合に「返済の義務」はあるのか、疑問に感じる方もいるかもしれません。
そこで今回は、被害で負った借金の返済義務や詐欺的行為にあった際に行う初期対応について解説します。また被害者が返済義務を回避する方法も紹介するので、詐欺的行為による借金でお悩みの方は、最後までご覧ください。
✓被害額を取り返す方法
✓詐欺的行為に気づいた際の初期対応
✓借金の返済義務を回避する方法はあるのか
✓借金を整理する方法
✓再び被害にあうことを防ぐ方法
詐欺被害で負った借金の返済義務は?
まずは、詐欺的行為の被害者にとって、気になる借金の返済義務について詳しくみていきましょう。
法律上は返済義務がある
詐欺的行為における被害で負った借金は、法律上返済の義務があります。詐欺的行為で借金を抱えたとしても、借金が帳消しになることはありません。詐欺的行為の被害で負った借金でも、通常と同様に返済しなければなりません。しかし返済義務があるものの、場合によって返済額を減らせる可能性があります。然るべき手続きを進めれば、詐欺による被害救済を図ることも可能です。詐欺被害で借金を抱えてしまった場合は、減額手段を考えるのがおすすめです。
借金の返済が滞ると罪になる?
借金の返済が滞った場合、一般的に刑事罰の対象とはなりません。ただし、民事上の責任が問われる可能性があります。例えば返済が遅れると、契約に基づき遅延損害金が発生する場合が考えられます。信用情報機関に個人情報が登録され、将来的な融資が難しくなってしまうかもしれません。
借りた当初から返済する意思や能力がないのに借金をした場合は、詐欺罪が成立する例もあります。借りたお金を本来とは別の用途で使い、それを隠ぺい・虚偽の報告を行ってしまうと横領罪に問われるケースもあるとされています。

被害額を取り返す方法は2つ
詐欺的行為の被害によって、失ったお金を取り戻す方法は2つあります。1つは、相手方の行為を「詐欺的行為である」と証明し、返金を求める方法。2つ目は、詐欺的行為によって生じた損害を「損害賠償請求」によって補う方法です。
両者はどちらも、加害者からお金を受け取ることを目的としていますが、法的には少し違います。前者(返金請求)は、被害額をそのまま返してもらうことによって、被害にあう前の経済状況に戻すことが目的です。対して後者(損害賠償請求)は、被害を受けた事実に対してお金が支払われます。そのため賠償請求を行うにあたって必要な裁判費用も、相手方に請求できます。これは被害そのものがなければ、裁判をおこす必要もないと考えられるためです。
錯誤・詐欺取消しと意思表示による返金
民法では、錯誤や詐欺的行為だと立証された場合に限り、意思表示の取り消しが可能なケースがあります。意思表示とは、一定の法律効果を欲する意思を外部に表示する行為のことです。意思表示の取り消しについては民法95条1項と96条1項に記載があり、場合によっては、支払いが無効になるかもしれません。
しかし、加害者からの返金請求に対して錯誤や詐欺的行為による取消しを主張する場合は、錯誤であったことの確認や詐欺的行為の事実を証明する必要があります。取引の内容やコミュニケーションの記録、第三者の証言などがあると、立証しやすくなります。
民法第96条には、詐欺行為による契約の取消しが可能である旨も記載されています。つまり返金請求は可能であるということです。しかし契約取消しに関する問題は法的に複雑になることが多く、その相手方からの反論等も考えられるため、司法書士や弁護士への相談がおすすめです。手続きの正確な進め方や必要な証拠の収集についてのサポートを行います。
加害者へ損害賠償請求をする
詐欺的行為の被害額を賠償してもらうには加害者から、損害賠償請求を行う方法もあります。損害賠償請求を行うためには、以下の要件を満たすことがポイントです。
- 加害行為:加害者の行為によって損害が発生した
- 損害の発生:被害者が実際に損害を被った
- 因果関係:加害行為と損害の間に直接的な因果関係があった
- 違法性:加害行為が法律に違反している
- 故意または過失:加害者に故意や過失があった
損害賠償請求の訴訟をおこすためには、相手方の名前や住所が必要です。そのため相手方の居場所がわからないと、請求が難しい可能性があります。
しかし加害者の個人情報を把握しておけば、被害を最小限に抑えられる例もあります。だまし取った金を使い込んでいたり海外口座に隠していたりすると、回収が難しいケースもあるので、返金を求める際は迅速な対応が求められます。

詐欺にあった際に行う初期対応
詐欺的行為の被害による借金が発覚した際は、以下3つの行動を迅速に行うのがおすすめです。
- 警察への被害届を出す
- 司法書士や弁護士へ相談する
- 金融機関へ連絡する
それぞれに適切な対応をみていきましょう。
警察への被害届を出す
詐欺的行為の被害にあった際は、最寄りの警察署に出向いて被害届を提出します。被害届は、以下の内容を記入するのが一般的です。
- 被害の内容(何が起きたのか、どのように被害を受けたのか)
- 被害金額(詐欺により失った金額)
- 日時と場所(詐欺が発生した日時と場所)
- 自分の情報(被害者の名前、住所、連絡先)
- 関連する書類(契約書、保証書、商品購入の証拠など)
- 相手方の情報(詐欺的行為を行った相手方の名前、連絡先、住所などの情報)
被害届を提出する際は、メールやチャットのログ、取引明細、領収書などの記録を用意しておくのもおすすめです。
被害届が受理されたら、受理番号を受け取ります。受理番号は、後に捜査の進捗状況を確認するために必要ですので大切に保管しておきましょう。
司法書士・弁護士へ相談する
法的措置を取るためには、司法書士・弁護士に相談するのもおすすめです。証拠の整理や訴訟の準備をサポートしてくれます。また、現段階で行うべき行動についてのアドバイスをもらえるので心強い味方になるでしょう。
事務所によっては、無料相談を実施しているケースもあります。成功報酬型を採用している事務所であれば、依頼費用を捻出できない場合でも利用できます。
詐欺被害に関する助言を受けるためには、地域の消費生活センターに相談するのもよいでしょう。地域の消費生活センターは、消費者庁のウェブサイトから検索できます。
金融機関への連絡する
詐欺的行為の被害は、相手方によって個人情報が流出しているケースもあります。金融機関へ連絡するのも初期対応のひとつです。
詐欺的行為に使用された口座やカードについては、銀行とクレジットカードのそれぞれの会社に連絡し、不正取引の停止や口座の凍結を依頼します。PayPalやその他の電子決済サービスを利用している場合は、サービス提供者にも不正利用の報告を行いましょう。
早めに個人情報の保護することで、被害拡大を防げる可能性も高まります。また関連するアカウントは、すべてパスワードを変更するといった対応が必要です。セキュリティ対策の強化として個人情報が漏洩していないかを確認し、必要に応じて各種機関に連絡して、監視を依頼するのもおすすめです。

詐欺被害者が返済義務を回避する方法はある?
結論から言えば、借金の返済義務そのものをなくす(回避する)ことは難しいでしょう。「自己破産」によって、詐欺的行為だけでなく、すべての借金をなくす方法しかありません。しかし自己破産には、後述するようにさまざまなデメリットがあり、現実的な方法とは言えません。ほかに選べる方法としては、借金の負担を軽減する「個人再生」があげられます。ただしこれにも難点があるため、順に解説します。
自己破産
自己破産は、借金の返済が困難な場合に債務を整理する手続きの1つです。自己破産の申立てをするには、申立書や陳述書、債権者一覧表、財産目録などの資料を準備します。自己破産の手続きをする際は、すべての債務(借金)を一覧表にまとめるのが一般的です。
しかし自己破産をすると、現金や預金、不動産、車といった所有する財産が処分される可能性もあります。場合によっては、自己破産をしないほうが手元に財産が残りやすいケースもあるでしょう。
破産手続きは裁判所が申立てを認めることで、破産手続きが開始されます。しかし一般企業に勤めている人の場合は「支払い能力がない」とまでは言えず、裁判所が申立てを認めないケースもあります。財産が処分されることも踏まえて、自己破産は実施しにくい方法と言えるでしょう。
個人再生
個人再生は、借金の返済が困難な人が、裁判所の手続きを経て借金の一部を減額し、再生計画に基づいて返済する方法です。個人再生の申し立ては裁判所で行います。申し立ての事前準備として、被害額の詳細(債権者名、借入金額、返済期限など)をすべてリストアップします。給与明細や税務署からの収入証明書、各債権者からの残高証明書、不動産登記簿謄本や車の登録証明書といった必要書類の収集も必須です。
申し立てを行うには、個人再生を希望する旨を明記した申立書を作成します。減額された借金をどのように返済していくのかといった再生計画案の作成も必要です。再生計画は、収入に基づき現実的な返済計画を立てることが重要になります。
個人再生の手続きは複雑なため、司法書士や弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士の場合は手続きまでを、司法書士の場合は書類作成までを代行可能です。いずれも再生計画の作成する際のサポートやアドバイスをしてもらえます。しかし個人再生には、限度額があります。 5,000万円を超える借金があると、個人再生を利用できません。被害額が大きい場合は、別の方法がよいでしょう。また個人再生が認められる要件も厳しく、手軽にできるとは言い難い手段です。

借金を整理するなら…
現実的な方法としては、任意整理がおすすめです。任意整理は債務整理の一つで、主に借金の返済条件を見直して、負担を軽減するための手続きです。自己破産や個人再生に比べて、現実的に実施しやすい方法と言えます。詐欺的行為で被った借金に対して、有効的な任意整理の方法をみていきましょう。
返済期間の延長交渉する
任意整理は、債権者(お金を借りている相手)に対して直接交渉を行います。詐欺的行為によって被った借金を任意整理するには、返済期間の延長がおすすめです。任意整理は裁判所を通さずに行うので、債権者の対応次第でスムーズに進められます。
返済期間の延長交渉が成立すれば、遅延損害金の発生も防げます。借金の減額にはつながらないものの、返済期間に対する負担を軽減できます。債権者との合意により、柔軟な返済条件が設定できるメリットもあります。
金利のカット交渉をする
任意整理は、金利カットの交渉も可能です。借金は、債権者に対して利子を支払うケースが多くあります。交渉によって金利がカットされると、月々の返済額が減少して経済的な負担も軽くなります。長期間にわたって返済が必要な場合は、金利をカットすることで支払う利息を減らせます。しかし金利のカット交渉は、全ての債権者が同意するとは限りません。返済期間の延長に対して、成立しにくい傾向があります。返済の遅延や未払いは、新たなトラブルの引き金となる可能性があるため、滞りなく返済する必要があるのも特徴です。

詐欺被害の再発防止対策
詐欺的行為の被害は、場合によって再発する可能性があります。最後に、被害の再発防止対策をみていきましょう。
リスクに対する認識を強化する
詐欺的行為による被害を再発させないためには、リスクに対する認識を強化することが大切です。個人情報をむやみに公開しないようにし、自宅の住所や電話番号、銀行口座番号などの個人情報も慎重に扱います。最新のセキュリティソフトを導入したり、強固なパスワードを定期的に変更したりするのもよいでしょう。
また疑わしい連絡があった場合は冷静に対応し、公的機関や司法書士、弁護士に相談することでリスクを減少させることができます。
信頼できる情報源を利用する
信頼できる情報源(ソース)を利用するのも、被害の再発防止対策のひとつです。情報源の不明なサイトを利用すると、個人情報が流出する可能性が高まります。また運営元が不透明なプラットフォームを使用すると、詐欺的行為の被害を再発させる恐れがあるでしょう。
費用が発生するサイトやプラットフォームを利用する際は、情報源を確認するクセをつけましょう。契約書や約款は細かく読み、不明点があれば確認してください。契約内容が不明瞭な場合や急いで契約を迫られる場合は、冷静に考える時間を作るようにしましょう。

詐欺で借金を負ったら丹誠司法書士法人へ
詐欺的行為の被害で負った借金は法律上、返済が必要です。しかし任意整理を行うことで、返済期間の延長や金利のカットができる可能性もあるでしょう。丹誠司法書士法人では、詐欺的行為の被害に対する対処法をアドバイスします。万が一、借金の返済が難しい場合でも、借金減額につながるお手伝いをします。無料相談は、LINEでの問い合わせにて受付可能です。詐欺的行為の被害による借金を抱える方はぜひ一度、丹誠司法書士法人までご相談ください。